
湯河原の園芸店で求めた葉山椒。去年はいま一どころかいま三くらいの葉ぶりだったが、今年は三月の上旬から芽吹きはじめ、あれよあれよという間にすずなりとなったのが四月の頭。そうなると待ち遠しいのはタケノコだ。


鴻雁北(こうがんかえる)頃合いに、馴染みの八百屋が初物を運んできた。小ぶりだから外皮をむけば可食部分は少ないが、鍋に入りやすいし柔らかいのでこれはこれで都合がいい。6本を買い求めるが、一週間もたたぬうちに、見るからに切り口が新鮮な大ぶりのブツをもってくるもんだから、うっかり手を出してしまった。
八百屋の常連客はさほどタケノコに興味がないとみえて、まったく売れない。むしろ「茹でたものがほしい」とみな口を揃えるので、遠慮なく買い占めさせていただいた。
さて、時間との勝負だ。すべての予定をキャンセルして、爆速で茹であげる。去年から、ぬかを使わずに茹でているが、特に問題はない。
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日記によれば、去年は茹でたタケノコの重量の20%の塩で埋蔵し、梅干用の瓶で保存している。水が上がってこなかった分については20%の塩水で補い、タケノコが常に塩水につかっている状態だ。おかげさまで一年、腐ることなく保存できた。だがひとつ、この保存には大きな欠点があった。
塩抜きに日をまたぐ時間がかかることだ。
計画性という才能を持ち合わせずに生まれてきた自分にとって、やや使いづらい保存方法だったと言わざるを得ない。
人生のもろもろにおいて、行き当たりばったりで生きてきたのだ。旅においても、明日どこに行くべきか、どこに泊まるかは現地で決めたいし、レストランは予約するより、通りの裏手から厨房をこっそり覗いて嗅いで決めるが、あんまり外さないのは家人からも存外驚かれる。
話がそれた。とにかく「明日、筍を食べよう。だから塩抜きしよう」という計画が立てられないのだ。明日になったら違うものが食べたくなるかもしれない。今日の晩ご飯は今日の昼ご飯を食べてから考えたい。
タケノコの長期保存あれこれ
一週間で都合10本のタケノコを入手したわけだ。茹でたてを食べるのが最上だが、今年は三種類の方法で長期保存してみることにした。冷蔵保存はタッパーにタケノコがかぶるほどの水でひたし、毎日水を替えながら、なるはやで食べきる。
脱気保存


大きめに切った筍を瓶に詰め、水を注ぎ、軽く蓋をする。大鍋に水をはり瓶を並べ、沸騰してから脱気20分。ぎゅっと蓋を閉めて殺菌20分。冷めるまで瓶を逆さにする。常温保存。(主に和食、中華用)
塩水保存
漬物用ビニール袋に水気をとった半割の筍と30%の塩水をいれ、空気がはいらないように縛って常温保存。
駅ビルの100円ショップに走り、瓶を奪取。ちなみに100円ショップの瓶は、蓋のつくりが甘いことが判明。①と②は無事に終えたが、筍が足りなくなり、③は未遂となった。まだタケノコ買うか?
①の脱気保存で注意したいのは、しっかりと脱気できたかどうかの確認だ。実は数日後、5瓶のうちひとつからわずかに空気が漏れて水が濁っているものができてしまった。他の瓶の蓋は凹んでいるが、該当のものは膨らんでいる。蓋は拍子抜けするほどすんなり開いてしまい、脱気が完全でなかったことが判明したのだ。タケノコを真水でよく洗い、ちょっとだけ囓ってみてギリセーフと判断し、すぐさま砂糖漬けに舵を切り、冷凍庫にしまった。もう少し発見が遅れていれば、命取りになるところだった。
とにもかくにも、今年もタケノコ料理の解禁である。隙あらば、食卓にタケノコをねじ込んでいきたい。
2025年タケノコ料理
タケノコご飯とタケノコと鶏の煮物


タケノコをおかずにタケノコご飯を食べている状態だ。
(左)タケノコご飯は常の通りだが、今年は油揚げを焼き、細かく砕いてから加えている。
(右)煮物は、乱切りした鶏モモ肉をさっと炒め、いちど取り除き、鶏から出た脂でタケノコを炒め、出汁・濃口醤油・みりん・酒・砂糖少々でしばし煮たのち、鶏肉をもどす。火が通ったら火を消し、味をふくませる。
タケノコのソテー


(左)ニンニクと唐辛子をオリーブオイルで炒めたのち、野菜とさっと湯がいたミズダコをソテー。味付けは塩とタイムを少々。
(右)ステーキの付け合わせとして。オリーブオイルでソテーし、味付けは塩のみ。
タケノコのリゾット

バターとオリーブオイルでタマネギとニンニクを炒めて、しんなりしたら米2合(150gくらい)、タケノコを加えてさらに炒めたのち、白ワインを加えてアルコールを飛ばし、温めておいた鶏出汁で煮込む。出汁が足りなくなればその都度、熱湯で調整。米が好みのかたさになったら、削ったパルミジャーノをどっさり混ぜ、塩・胡椒。好みで追いバター。
タケノコと豆腐をそえたカイワリアジのアラ汁

潮汁にタケノコを添えるだけで、春風が吹く。
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タケノコとヤリイカの木の芽和え

タケノコ、木の芽、ヤリイカ。春の千両役者がそろったとあらば、木の芽和えしかない。
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カンボジア風サツマイモとタケノコのカレー


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タケノコ の天ぷら

一口サイズに切ったタケノコを、出汁、塩、薄口醤油と酒とみりんを少々で15分ほど煮て、下味をつけておく。濃い味にしてもかまわないし、その場合は天つゆとか塩なしで食べる。お好みで。
汁気をとったタケノコに天ぷら衣をまとわせ、180度でからっと揚げる。衣には木の芽を忍ばせてみたが、揚げると香りが飛んでしまうので、生で添えたほうが断然いい。
