梅雨入り。
新居のリフォーム状況を視察した帰りに立ち寄った湯河原のJAで目に止まったのは、真竹(マダケ)だ。
「もうそろそろ時期も終わりかねぇ」と呟く地元のおばちゃんは一本ずつ手に取って切り口のチェックに余念がない。
筍ラストスパート到来である。
いわく「切り口が黒くなってきたのはちょっと古くなってるよ。あとあんまり細いと食べるとこ少ないよ」
耳より情報を武器に、雨降りしきるなかこれぞと思うタケノコを吟味した。
真竹は春先に出てくる筍と違ってアクが少ないので、茹でたら速攻食べられるという手軽さがずぼらに拍車がかかってきた自分にはぴったりだ。
皮を剥いた竹は鍋に入る大きさに切り、たっぷりの水をはった鍋に入れ、落とし蓋をして点火。沸騰したら弱火に落とし、20〜30分ほど湯がいて水にさらしておく。
ちょうど蒸し暑くなってきたからまずはグリーンカレーからいってみよう。
グリーンカレーにタケノコはマストだと妄信している。むしろタケノコだけでもいいと思っているくらい、タケノコの存在はタイカレーを引き締めてくれる。
しかも半ば青竹になりかけてるくらい固い部分がいい。さらりとしたタイカレーだと茶漬けよろしく米とともに丸呑みしがちだから、歯ごたえのあるタケノコがいないとインパクトに欠けるのだ。
繊維質が強いので食べ過ぎると胃がごろごろして夜中にしくしく痛むこともあるんだが、どうもやめられないのだ。
ところで友人であり師匠であるタイ料理のシェフが教えてくれた途方もなく旨いが煩雑すぎる本格グリーンカレーのペーストを紹介しよう。
ドライハーブにクミン、コリアンダー、カルダモン、メース。
フレッシュハーブに青唐辛子(プリッチーファー:グリーンカレーの色の素)、小さい生唐辛子(プリッキーヌ)、ガランガル、レモングラス、コリアンダーの根、コブミカンの皮、小タマネギ、ニンニク、白胡椒、海老ペースト(カピ)、塩。
これらをクロックヒンと呼ばれる石臼で根気よく潰していくんだが……諦めよう。ここは市販のペーストを求めるのが賢明というもの。推しはメープロイだ。
ちなみに赤字は共通するスパイスで、メープロイはこれにターメリックが入っている。
市販のカレーペーストの容器に記載してあるレシピを見れば誰でも、いとも簡単につくれるグリーンカレーだが、自分なりに工夫している点は次の点だ。
- ココナッツミルクではなく、ココナッツクリームを使う。
タイ現地ではクリームとミルクのダブル使いが主流のようだが、純日本人の自分はややひつこく感じる。 - 煮込むと香りが飛ぶのでココナッツクリームは二回に分けて投入する。
- ココナッツクリームの油分でカレーペーストを炒める。
- 追いコブミカンの葉。
いちばん大事なのは、香りが飛んでしまうので煮込みすぎないことだろう。ペーストさえあれば15分くらいで出来てしまう手軽なカレーなのだ。これはなんだか日本の味噌汁と相通じるものを感じる。味噌を先に入れるか、後にいれるかの違いなんじゃないか。
ちなみにグリーンカレーペーストの大さじ1杯を量ってみると約18gで、偶然にも味噌と同じだった。
グリーン味噌汁ととらえればもっと日常な食事になるかもしれない。