我が家はいまや侵略の危機にある。姿かたちを変えてはいるものの、みな同じ目的をもって我が家に住み着いたとみえる。総称おろし器。改めて数えてみると、9体、いや8体だった。
おろし器のリストラについて考える
これはアメリカのことを笑っちゃいられない状況である。いや、アメリカ人がたった一つの機能しか果たさない大げさな武器をもっているのは問題ない。あれだけの軍事力をもって彼らは料理をつくるのだ。違いは国土の広さ。圧倒的な収納力を持つアメリカのキッチンと我が家の台所を比べたら、空母と舟ほどの差がある。
そろそろ真剣にリストラを考えなければならない時がきたようだ。切れ味、使う頻度、洗いやすさを基準にして、ひとつひとつ検証してみることにした。
鮫皮おろし器
これは友人から譲り受けたものなので、もともと年季が入っている。これほど妙なおろし器は世界でも珍しいのではないか。なにせワサビ専門なうえに材質はサメの皮である。おろし器の特殊部隊といったところか。
生ワサビを買うことはめったにないが、ごくたまにその友人が生ワサビと刺身を持ってふらりとやってくるから、大人の事情でリストラしづらいヤツ。そしてあまりに特殊すぎて評価もしづらい。もちろん、これでおろした生ワサビは香りがよく滑らかで、チューブ入りのワサビとは別物であることは間違いないんだが……。
評価
切れ味 ★★★★☆(ただしワサビのみ)
使う頻度 ★☆☆☆☆
洗いやすさ ★☆☆☆☆
IKEAのチーズおろし器
安さに躍らされて衝動買い。力を入れてもうまくパルミジャーノが削れないためストレスがかかる。さらに時間もかかるうえに肩こりが悪化した。IKEAで刃物類は買ってはいけないと肝に命じた一品。こいつはリストラ決定。
評価
切れ味 ★☆☆☆☆
使う頻度 ★☆☆☆☆
洗いやすさ ★★☆☆☆
Microplane のおろし器
IKEAのチーズおろし器があまりに使えなかったので購入。なかなかいい値段がするので二の足を踏んでいたが、いまから思えばなんでもっと早くに買わなかったんだろうと後悔するほど切れ味抜群。パルミジャーノは軽くなでつけるだけでバサバサと爽快に削れる。
固いナツメグから柔らかいレモンの皮までなんでもござれの優秀なヤツで、おろし器の精鋭部隊だ。
評価
切れ味 ★★★★★
使う頻度 ★★★☆☆
洗いやすさ ★★★★☆
4面グレーター
沖縄のしりしり器を探していたんだが、気付けばこちらを購入していた。もともとはチーズおろし器だが、人参やジャガイモなど固い野菜を粗くおろすときに便利。しかも、当たり前だが4面あるので4種類の切り方ができるため、しりしり器一台より得した気分になれる四方美人なヤツだ。ただし収納と洗いやすさの点では難がある。
評価
切れ味 ★★★★☆
使う頻度 ★★☆☆☆
洗いやすさ ★☆☆☆☆
おすすめ料理
- 哲学者テオプラストスに学ぶ、ビーツの食べかた
- 6種の野菜しりしりサラダ
- アスリートにおすすめ、ビーツのマフィン
- カリフラワーは生で食べられる! フランスに学ぶタブレ
- ジャガイモさえあれば、ロスティはつくれるぞ!
セラミックのおろし器
ホームセンターで購入。おもに大根や生姜、山芋など汁っぽい食材に向いている。底にゴムが貼ってあり、すっているときも安定する。蕎麦やインドカレーのときに出番が多い。それなりに不満もなく使っており、これは二代目である。
評価
切れ味 ★★☆☆☆
使う頻度 ★★★☆☆
洗いやすさ ★★★★★
おすすめ料理
100円ショップのおろし器
最初はこいつだけでまかなっていたが、最近はめっきり出番なし。性能も使い勝手も他に比べてかなり劣るが、スタンダードタイプなのでリストラするかどうか一番悩むヤツ。スライサーはまったく使い物にならない。
評価
切れ味 ★☆☆☆☆
使う頻度 ★☆☆☆☆
洗いやすさ ★★☆☆☆
ミニ金おろし
岩塩の塊をもらったときにオマケでついてきたヤツ。岩塩はまったく削れなかったのでリストラ決定とおもいきや、現在はニンニク専用として活躍中。かなり細かくすれるので、ドレッシングやニンニク醤油など少量をするときに使う。
評価
切れ味 ★★★☆☆
使う頻度 ★★★★☆
洗いやすさ ★★★☆☆
瀬戸物の卓上おろし器
ほとんど出番なし。性能も悪く、ただの小皿といっていい。リストラ候補の筆頭なんだがこれもいただきものなので悩ましい。
評価
切れ味 ★☆☆☆☆
使う頻度 ★☆☆☆☆
洗いやすさ ★★☆☆☆
おろし器の世界
それにしても「する」という調理はなかなかに奥深いことがわかってきた。たかが「する」といっても食材によって向き不向きがあるし、それぞれの性格がわかってくるとなんだか愛おしくさえ思えてきた。
まずい、これではいつまでもリストラできないじゃないか。よくよく悩んだすえに、今回はIKEAと100円ショップのおろし器をリストラすることにする。それにしても、日本の一般家庭には、平均何台のおろし器があるのだろう?
追記(2017.10.18)
大矢製作所の銅製おろし金
先日、「マツコの知らない世界」で大矢製作所のおろし金が紹介されていた。すべての刃が一本一本すべて手作業でつくられている。あえて刃を不揃いに立たせるころで、大根を軽い力でおろすことができるそうだ。実際すってみると、大根から流れ出る水分が圧倒的に少ないことに驚いた。うーん、これはほしい。いや、おいおい、リストラしたばっかりだろうに…。物欲というものはまったく果てしない。