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時速1kmの思考

【暮らしの道具】ここがすごいよ、ヤットコ鍋

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年末もさし迫り、ヤットコ鍋への熱が急上昇。それも当然、お節の季節が近づいてきているからだ。
ヤットコ鍋とは持ち手がない雪平鍋(行平鍋)で、柄がないので重ね置きができるため、手狭な厨房でも重宝する昔ながらの鍋である。
働いていた和食店ではこのヤットコ鍋が調理器具のほとんどを占めるほどだった。初めて鍋を握ったときは、今にも鍋が滑り落ちそうな負の妄想にとりつかれ、思わず歯をくいしばるほどだったが、慣れてしまえばこんなに使い勝手のよい鍋もない。今回は素人が使ってみたヤットコ鍋のすばらしさについて、書いてみたい。






nakao/中尾アルミ製作所 アルミ 打出 ヤットコ鍋(目盛付)21cm

内寸 :21cm 深さ:87mm/本体重量:0.6kg/材質:アルミ/容量:2.7L

ここがすごいよヤットコ鍋

ヤットコ鍋の素材

ヤットコ鍋は昔、アルミニウムが主流だったが、ここ最近はステンレス、またはその他の金属を使った多重構造のものも販売されている(ちなみに銅製のヤットコ鍋も気になるところだが、ちと高価である)。
というのも一時期、アルミニウムがアルツハイマー病を引き起こすというという噂が広まってしまったからだ。とはいえこの誤情報については論拠に乏しく、その因果関係を証明するものはないと厚生労働省も認めている(データ改ざんしまくる厚生労働省の発表を鵜呑みにするのも微妙かもしれないが、実際アルミ鍋を常用していた世代はそれなりに元気じゃないか)。
この風評被害によって廃業した鍋メーカーもあるほど、その打撃は凄まじいものだったという。
また鍋からアルミニウムを摂取できるとしてもそれはごくごく微量で、ほとんどは人体の外へそのまま排出されてしまうから気にすることはないのだ。むしろベーキングパウダーや添加物のほうが危ないだろう。この点についてはフライパン倶楽部の記事が詳しいのでぜひご一読いただきたい。
アルミ鍋 風評の考察:お料理と健康:フライパン倶楽部

私は、堂々とアルミニウムのヤットコ鍋を使っている。なぜならアルミニウムだからこそヤットコ鍋の威力を体感できるからだ。

アルミニウム×ヤットコ鍋=最強の料理ツール

とにかく軽い!

アルミ調理器具メーカーの老舗、中尾の21cmのヤットコ鍋は600gだ。容量が2.7Lなので最終的には3kgを超えるものの、そんなに満水で使うことはまず、ない。
同メーカーのステンレス合金でつくられたキングデンジと比べても、その重量はほぼ半分といえる。

名称 容量 重さ 板厚
中尾 アルミヤットコ鍋 21cm 2.7L 600g 3mm
中尾 キングデンジ ヤットコ鍋 21cm 2.7L 1300g 2.5mm

炒めるときだって鍋は楽々ふれる。同じ口径でも、ル・クルーゼなら片手持ちはかなり厳しい。
日常使いの鍋において、軽いは正義なのだ。

驚異の熱伝導!

よく鍋で使われている金属の熱伝導率を比較すると、銅>アルミニウム>鉄>ステンレスの順番になる。もちろん最近ではステンレスとの合板素材もあるので簡単に優劣がつけられるものではない。
いちばん汎用的かつ安価なのはアルミニウム素材であり、だからこそ日本の食卓に浸透したといえよう。
さらに突っ込むと、アルミニウムの厚さによって火の通りかたが違ってくる。
中尾のヤットコ鍋の板厚は3ミリという極厚構造なので、大鍋の場合は顕著に、ステンレスよりもあっという間に湯がわく。
なので茹でる、出汁をとるといった和食の中心となる調理がストレスフリーなのだ。

鍋ごと蒸せる

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柄がないので、調味液ごと蒸し器にそのまま入れられる。

収納スペースいらず

柄がないため重ね置きできるのが日本の極小台所にはピッタリだ。

洗いやすくて衛生的

柄がある鍋と比べて断然洗いやすい。まぁ、ボウルを洗っているようなものだ。柄の部分は焦げついたり、汚れが詰まったり、とにかく掃除しにくい部分なんだが、そういう意味ではまるっと洗えるので衛生的にも優秀といえる。
そしてここでも軽いは正義だ! がでてくるが、軽いと洗うのも負担が少ないのだ。

ヤットコ鍋の使いかた

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ヤットコ鍋を、ヤットコばさみを使って初めて持ち上げたときの恐怖は今でも忘れないが、板長に教えられた唯一のコツがこれだ。

脇を軽くしめて、ヤットコばさみで鍋縁を握り、自分のほうに引きよせて、鍋を持ち上げる。

フォーム的にはGACKT氏が格付けチェックで正解したときの「ヨッシャー」というガッツポーズに近い。
テコの原理を使うわけだが、ヤットコばさみを垂直に持ち上げるより、一度引き寄せて持ち上げたほうがたしかに軽く感じるのだ。
最初は小さなヤットコ鍋から始めたが、人間とは慣れる生き物で、そのうち大きなヤットコ鍋でも持ち上げられるようになってくる。
とはいえ油断は禁物。鍋の中身によっては思いのほか重たい場合もある。
引き寄せてしっかりと握り、傾けて、少し持ち上げて自分の握力と相談するのはもちろんだ。

ヤットコ鍋の取り扱いについて

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アルミニウムのヤットコ鍋は、使っているうちに黒ずんでくる。この黒ずみは決して悪いものではない。気になる人によってはスチールたわしでゴシゴシこする場合もあるとは思うが、そうすると鍋はすぐに傷つく。アルミニウムは柔らかい素材なのだ。
まずはヤットコ鍋に付属している説明書をさらっておこう。

  • 空焚きしない。
  • 使用後はよく洗って乾燥する
  • 満水で使用しない
  • 鍋の中に長時間料理を保存しない
  • ナイロンたわしで洗う。
  • 焦げつき等を落とす際に、ナイフなど鋭利なものを使わない。
  • 酢、重曹など酸性、アルカリ性のものは避ける。
  • やっとこ鍋にはかならず「やっとこばさみ」を使う。

ヤットコばさみは必要か?

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ヤットコ鍋を使うには、柄の部分を補うヤットコばさみが必要になる。
この鍋だけにヤットコばさみを買うのは馬鹿らしいと思うかもしれないが、意外とこれは使える道具だ。
たとえば焼きたての小さなグラタン皿やアヒージョ鍋など、オーブンミットでは少し扱いづらいものでもヤットコばさみでひょいと持ち上げられるのだ。これは嬉しい誤算だった。

とはいえ、ヤットコばさみには慣れも必要。料理をぶちまけたら元も子もない。
中尾のヤットコばさみは、挟む部分がワッフル状に加工されていて、店にあるものよりも滑りにくい構造になっていた。
もしヤットコばさみを使いこなす自信がなければ、ティファール風のワンタッチで固定してくれる「パングリッパー」も一案かもしれない。
しかし、私は全力で普通のヤットコばさみをオススメする。というのも昔、柄が取り外せるティファールを使っていたが、かなりぐらつきはあったし、その鍋にしか使えない構造になっているからだ。結局は鍋ごと手放すことになったが、調理器具はシンプルに限ると学んだいい機会だった。






中尾アルミ製作所 ヤットコバサミ

サイズ:24cm/本体重量:0.365kg/素材・材質:鉄クロームメッキ/原産国:日本






やっとこ鍋 ヤットコ鍋用 ハサミ パングリッパーL型

外寸 :全長:190mm/重量:210g/材質:鉄・クロームメッキ

ヤットコ鍋でパスタをつくれるのか?

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本格的にパスタをつくる人であれば、たいていの人がアルミパンを使っているだろう。なぜプロがアルミパンを使うかといえば、ソースの色が見やすい、そしてアルミニウムの性質上、熱しやすく冷めやすいため火加減のコントロールがしやすいのためだ(熱伝導率は高いが、熱容量は小さい)。
そこでふと思ったのだが、ヤットコ鍋でパスタをつくってみたらどうだろうということだ。

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考えていてもしょうがないので、まずはカルボナーラをつくってみた。
ベーコンを炒めて、パスタの湯がき汁でのばしたらパスタを入れる。ひたすらかき混ぜていくとだんだんとろりと乳化してくるが、鍋の色が明るいためその様子がとてもよくわかる。
そして、パスタではフライパンをあおるという行為がよく見られるが、ヤットコばさみでも余裕でクリア。鍋の高さがあるので、素人でもソースの飛び散りが軽減されるうえに、アルミパンと違って柄が熱くならないのが最大の強みか。なおアルミ鍋は傷がつきやすいので、混ぜるときはシリコンでカバーされたトングや菜箸を使うことを強くおすすめする。
カルボナーラの正念場は卵液を加えてとろりと仕上げる過程だが、温度が高すぎると卵が固まってボソボソになってしまう。ここは火を切って余熱で手早くかき混ぜると失敗が少ない。
そうしてカルボナーラは無事に完成したのだ。出来映えもまずまずだ。

悩ましいのはヤットコ鍋でトマトソースのパスタをつくる可否だ。基本的にアルミニウムは酸とアルカリの食材にはむいていないし、食材をそのまま放置するのも御法度。とはいえトマトソースをアルミパンで煮る人もいるくらいだ。ということで、まずは生のトマトを使って試してみた。

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結果、これは非常に満足のいく出来となった。もちろん、使い終わったらすぐに流しにつけて水を張っておく。
ヤットコ鍋でパスタをつくるのは、素人にとっては割といい方法なのかもしれない。

ヤットコ鍋の黒ずみは土佐酢ですっきり!(2019年5月追記)

やっとこ鍋
すっかり黒ずんでしまったヤットコ鍋
ていねいに取り扱っていたはずのヤットコ鍋が、真っ黒になってしまった。原因は、水道水を長い時間沸騰させ続けてしまったことだ。アルミニウムと水が酸化して、水酸化アルミニウムが表面に付着してしまったのだ。

この黒ずみ、体に害はないが、やはり見てくれが悪いのと、出汁の微妙な色あいなどがが判別しずらいのは問題だ。そこで一般的な対処法を検討してみる。

レモンの切り口で磨く

ひとつ200円もする国産レモンを使うにはもったいなさすぎるので却下。

クエン酸を入れて沸かす

わざわざ買うのもどうなのか? 保留したのち却下。

酢を沸かす

たいした効果がなかったうえに、黒ずみの高さによっては相当な量の酢が必要になる。

リンゴの皮をいれて沸かす

リンゴの季節じゃなかったので却下。

金たわしとクレンザーでがしがし磨く

傷がつくからあり得ん! 却下。

どれもぱっとした対処方法でなく、鍋の黒ずみはしばらく放置することになってしまった。
ところがある日、あの頑固な黒ずみはすっかり消えていたのだ。

一石二鳥にヤットコ鍋の黒ずみをとる方法

それは、土佐酢をつくった直後のことだった。
結果的に対処法③の「酢をわかす」に近いことをやっていたわけだが、酢を無駄にすることもないし、土佐酢もできるしで、一石二鳥だ。
konpeito.hatenablog.jp
さらに『NHKきょうの料理(2013年11月号より)』によれば、

酸性の強い「トマト」を使った煮込み料理(トマトのミートソースなど)を黒ずんでしまったアルミ鍋でつくる

と料理が出来上がるころには黒ずみが消えるという。たしかに、これも一石二鳥のやりかたである。実際にこの鍋でトマトソースをつくると、鍋の黒ずみは一発で落ちる。

つまり、酸の強い料理をつくれば、黒ずみは無理なく、自然にとれるのだ。ということは、たまにはヤットコ鍋でトマトパスタをつくるのは、理に適っていたのかもしれない。