中華の達人を目指し、リバーライトの炒め鍋(30cm)を使い始めてはや8年ほどがたつが、わけあってこのたび、2台目の中華鍋を導入することになった。
その大きな理由のひとつとして、加齢があげられる。
最近、リバーライトの炒め鍋が重く感じられるようになってしまったのだ。それに持病の腰痛が追い打ちをかけた。
コロナの影響で鍋を握ったり、洗い物をしたりと台所に立つ時間が増え、なんだかんだで絶え間なく手を使っているので、握力や手首までも弱体化が進んでいる。
在宅勤務が始まり、昼食もつくるようになってほぼ1年。まさか一年も続くとは思わなかった。そのうちに家人のオフィスは縮小され、決められた座席というものも消えた。ヒトの世は移ろうものである。
この一年を振り返って改めて感じたのは、炒め物というジャンルはいちばん手軽に、効率よく栄養摂取できる手段であるということだ。肉でも野菜でも、油でさっと炒めれば短時間で一品ができあがる。中華鍋の出番も明らかに増えた一年だったが、疲労はじわじわと溜まりいま累積赤字の状態だ。
いまこそ必要なのは、より軽く、小さく、機動力ある中華鍋。そこで求めたのが山田工業所の打ち出し北京鍋、直径27cmのものだ。なによりいますぐにでも使いたかったので、空焚き済みのものを選んだ。ノーマルの鍋より825円高かったが、家でしっかり空焚きするのはなかなかの重労働なので、全力で空焚き済みの鍋をおすすめしたい。
実際使ってみると、いまの私にはちょうどいい塩梅の鍋だった。なによりまず、軽い。
軽いという正義
リバーライトの炒め鍋(直径30cm、板厚1.6mm)は重さにして1.2kg。山田の北京鍋(直径27cm、板厚1.2mm)は820g。この約400gの差は筋力の少ない左腕にとってはかなりデカイものだった。
家庭の火力で中華鍋をあおる行為はナンセンスという意見もあるが、たとえば玉子を炒めるときなどは鍋をふってひっくり返すという作業が必要になってくるので、軽々と鍋をふれるというのはメリットである。軽いので洗うのも苦じゃなくなった。やはり軽いは正義である。
計算され尽くした鍋底の丸み
リバーライトの炒め鍋は底がフラットな構造で、家庭のガスコンロの上でも安定するので揚げ鍋にも使え、ハンバーグや餃子も焼けるなど1台で複数のニーズを満たしてくれるのが特徴だ。
かたや山田の鍋はまさに中華鍋然としており、底が丸みをおびているのでガスコンロの上ではやや不安定。とはいえある角度でおけば安定することもわかったので、五徳の購入は先延ばしにする。(追記:2023年7月、山田工業所の中華五徳を購入した。詳細は文末に追記している)
なによりこの丸底構造が本領を発揮するのは、みじん切りしたニンニクやネギ、ショウガなどの香味野菜を炒めるときだ。鍋底の丸みの中央に油が溜まるので少量の油で事足りる。さらに香味野菜も中央に集まってくれるのでお玉をむだにガチャガチャかき回す必要もなく自然に香りが立ってくる。リバーライトの炒め鍋で少量の炒め物をする場合は、鍋を傾けて油を端に寄せる必要があったので、より多くの油を使っていたのかもしれない。
中華お玉もカーブした鍋肌に吸い付くように沿ってくれ、これは平たい鍋底では味わえなかった感覚だ。
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柄が熱くなる問題
山田の中華鍋はプロ仕様ということもあり、柄は鍋に直接溶接されたむき出しの鉄であり、調理中に熱くなってしまう。家庭用にはそのデメリットをカバーすべく木の柄をつけたものや、柄の部分だけチタンに置き換えたものもあり、どちらも魅力的な商品だ。
サイズ:φ27.0×D6.0cm 板厚1.2mm
重量:約700g
素材・材質:鉄(本体・リベット)、チタン(取っ手)
がさつな自分の性格を鑑みると、この柄はかなり悩みどころだった。なぜか熱いとわかっていても触ってしまう僻があるのだ。
価格、重さ、形状、洗いやすさの点から、結局はスタンダードな鍋を購入したが、実際使ってみても、調理の時間が長引けば柄はそれなりに熱くなる。むしろ熱くなる前にさっと炒められるくらいの技術を磨くべく精進するつもりだ。
二人家族に27cmの中華鍋はちょうどいい
鍋が届いてからほぼ毎日、何かしらの炒め物を献立にいれてみた。
いまのところ、山田の中華鍋とリバーライトの炒め鍋の使い分けはこうだ。
山田:野菜炒め、卵料理、水分少なめの餡かけ料理
リバーライト:3人前の焼きそば、スープ類、自家製麻辣油
短時間でさっと炒めるのは熱伝導のよい板厚1.2mmの山田。広東鍋のようにガスコンロにおいて調理するものには板厚1.6mmで蓄熱性の高いリバーライトだ。
27cmは中華鍋としては小さすぎるのではないか、という心配も無用であった。イメージとしては、町中華の一品料理くらいの分量だろうが、ほかに副菜を数品加えることを考えたら、二人暮らしの中華鍋としては相当に優秀である。