ポルトガルのおいしい銅鍋
カタプラーナ
銅でできた亀をふたつ合わせたような形をしたカタプラーナ(Cataplana)はポルトガルの伝統的な鍋なんだが、日本の玉子焼き鍋を凌ぐほどの個性的な出で立ちをしている。
初めてカタプラーナを目にしたのは、「コウケンテツの世界幸せゴハン紀行~ポルトガル~」という番組だ。ポルトガル最南端の街ファロで料理するのは、この道うん十年だという伝説の漁師。見た目もしゃべりもクセのある爺さんだ。
粗みじんのニンニク、いかにも新鮮な二枚貝とエビを無遠慮にがさがさとカタプラーナに入れ、火にかけて上蓋を閉める。塩さえ入れない究極のシンプル、これがアルガルヴェ地方に伝わる伝統料理だという。
カタプラーナ鍋
材質:銅(内側に錫メッキ)
サイズ:直径21cm(1〜2人用)+鍋敷き/日本語レシピつき※IH調理器は非対応
備考:直径26cmあり(3〜4人用)
どうやらすっかり取り憑かれてしまったようで、寝ても覚めてもこの鍋が頭から離れない。もちろん、すぐに購入には踏み切れなかった。専門性が強すぎるし、場所もとる。そもそもポルトガル料理なんて毎日食べられるはずもない。
だがなぜだろう、今やそれが手元にある。どうやら酒の勢いで買ってしまったらしい。見れば見るほど奇妙な鍋なんだが、その秘密を探ってみる。
カタプラーナのおいしい秘密
ドーム型
カタプラーナの秘密はまずこの独特な形にある。いつしか猫も杓子もタジン鍋だった時代があったが、その調理の構造は似ているようだ。つまり大きく出っ張った部分が水分をたくわえ、熱によって水蒸気が対流し、食材が蒸される仕組みだ。長いことイスラムの影響があったイベリア半島だから、カタプラーナとタジンは異母兄弟くらいにはなるのかもしれない。
すべてのパーツが銅製
金属素材のなかでも、熱の伝導率はずば抜けている銅(銅>アルミ>鉄>ステンレス)。食材が均等に煮えるので美味しく仕上がると、銅の鍋は世界中で愛されている。母の言葉を借りれば「火のアタリが柔らかい」のだ。
またオーブンにそのまま入れても問題ないし、タジン鍋と違って落としたとしてもそうそう壊れることはない。
魚貝料理をおいしくする鍋
一般的に、魚介類を美味しく食べる理想の温度は55〜60℃だから(もちろん魚の種類にもよる)、火のアタリに“カド”があるとあっというまにぱさついてしまう。この鍋なら誰でも簡単に、ふっくらとした魚貝の蒸し煮がつくれるはず……なのだ。
ではさっそく鍋を使ってみよう。まずは王道、魚貝のカタプラーナだ。
カタプラーナ応用編
カタプラーナで豚しゃぶしゃぶ
しゃぶしゃぶには銅製の鍋が一番だと言われている。煙突はないが、気分はあがる!
カタプラーナで捏ねないパン
konpeito.hatenablog.jp
「捏ねないパン」をつくるときは鋳物鍋のルクルーゼを使っていたんだが、230℃という高温で焼くため鍋全体が煤けてしまった。それにルクルーゼ自体もしっかりと余熱せねばならず、緩いパン生地を入れるときに火傷したこともあった。
そこでカタプラーナで生地を二次発酵させ、余熱せずにパンを焼いてみた(もちろんオーブン自体は余熱する)。銅の熱伝導率のよさを利用するのだ。しっかり気泡もできて、モチモチのパンになったうえに、鍋の焦げつきもなし。
カタプラーナでローストチキン
ふつう、ローストチキンは焼いている間に一度はひっくり返してやらないといい色に焼き上がらないものだけど、カタプラーナにのせて焼けばひっくり返さずとも、胸肉側もこんがりと美しく焼ける。手間も省けていうことなしだ。
ご覧の通り、ポルトガル料理だけでなく、いろいろと応用が効きそうだ。調理に時間も手間もかからず、食卓にそのまま出してもなかなかの存在感だし、上蓋は食べ終わった貝殻入れにもなる。今のところいいことずくめなのである。