バイ貝とかツブ貝とか、とにかく巻いている貝を見つけると気持ちが高ぶってしまう。遺伝子に刻み込まれた採集時代の名残かもしれない。
幼いころ葉山の海で大人の拳ほどある巻き貝を見つけた。ぬるっと殻からはみ出した身に興奮した人生初の採集。地元のおじいが炭火で焼いてくれた。焼けた醤油の香ばしさ、じゅわじゅわと溢れる汁、食べごろをじっと見守った。が、その貝が私の口には入ることはなかった。貝には毒がある可能性もあるから子供には危ないと、私の初の獲物は両親にまるまる食べられてしまったのだ。大人はずるいと海岸でわめき散らした苦い思い出(両親は腹の一つも壊さず今も健在)。
食べ物の恨みは根深いのだ。
さて、バイ貝のうま煮は店でも人気のメニューだ。「これがお通しだったらいいのに」という客もいたけれど、貝は苦手な人もいるからお通しにはむかないと板長はいっていた。
板長がバイ貝を煮ている姿が好きなのは、どことなくあの葉山のおじいの面影と重なるからなのか。
「貝はね、大根を入れて煮るとなんかの酵素が働いて柔らかくなるんだよ。知ってた? こないだテレビでやってたよ」
この道50年なのにテレビかよっ!
思わず吹き出してしまった。
板長直伝、貝を柔らかく煮る3つのポイント
- 冷たい調味液で煮る
- 大根の切れ端を入れる
- 蒸す
ばい貝、もしくはツブ貝のうま煮
調味液を合わせる
出汁、調味料、昆布、大根の切れ端、ショウガの薄切りをいれた調味液に下ゆでした貝を入れ、一煮立ちさせる。
調味液は、
出汁 | みりん | 酒 | 薄口醤油 |
6 | 1 | 1 | 1 |
ここで味見。味が決まったらサランラップをして鍋ごと蒸していくわけだが……。
蒸す
店では柄のないやっとこ鍋を使っているので、鍋ごと蒸し器に入れるが、貝が入りきらなかったので調味液を一煮立ちさせてボウルで蒸すことになった。
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30〜40分蒸したら、そのまま常温になるまで放置する。
冷蔵庫で冷やしていただく。
夏の晩酌の一品にぜひ。
最後はタレがあまるので、うどんのつゆで。ニンジンのかき揚げと温泉玉子をのっける。