友人らが来熱する折に出す朝飯は、和定食と決めている。前日の宴会で泥のように飲んだくれたとしても、朝風呂につかればキレイさっぱりとリセットされ、ひとっ風呂後の和定食は熱海旅情を盛り上げてくれる格好のアイテム。まぁ端的に言えば、旅館ごっこだ。
定食には土鍋ごはん、焼き魚(たいていは山六ひもの店の塩鯖か魚九の塩鮭)、だし巻き玉子、季節のお浸し、納豆、味噌汁を当番させ、プラスアルファで漬物や常備菜など適当に並べる。
カメラマンのPはだし巻き玉子に興味をもったようで、後日「オススメのだし巻き専用の銅鍋を教えてくれ」とヤル気満々だ。手持ちはEBM(遠藤商事)のものだが、いま気になっているのは「中村銅器のもの」だと答える。
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中村銅器製作所のHPを確認した彼は、「実家の近くだ!」と前のめりで興奮している。しかも、銅鍋はおしなべて価格が高いものだが、店頭で販売しているという規格外の小さな卵焼き器は、2500円という破格っぷりなことが判明。にわかに自分ものっかってしまった。これは是が非でも手に入れるべきだろう。
規格外玉子焼き器
9cm×15cm×3cm(高さ)1.5mm既製商品と同じ板厚
卵1~3個で本格的な厚焼き玉子が焼けます。
中村銅器製作所のHPより
ほどなく我が家にも、中村銅器の卵焼き器がやって来た。
今年で10年目を迎えるEBMのものよりも小さいくせに、ずっしりと重たい。これが板厚1.5mmの重みか・・・・・・と量ってみると500gで、EBMの675gより軽い。だがコンロに置いてみると、安定するのは中村のほうだから不思議だ。縁はなく、銅の立ち上がりの背筋は息をのむほど美しい。規格品の端材でつくっているなんて信じられない造形美だ。
まずは説明書を拝読。初回は「出汁をいれずに卵だけでつくれ」とある。御意。
仰せのままに、卵3個で焼いてみた。
どうだ、この感動的な角の立ち上がりを見てくれ! 熱の伝わりは圧倒的に速い。中火でテンポ良く玉子を巻いていける。もちろん卵はこびりつくことなく、するする滑る。
写真ではわかりづらいが、よくよく見ると、錫びきにムラがある。すべて手作業でつくられているからこんなもんなんだろう。そう思っていたが・・・・・・実はこの錫の微妙な凹凸が銅と卵の間にわずかな隙間をつくり、するするを実現しているのではないか、と睨んでいる。
これは一家に一台、いや、2台あってもいい。大きいのも欲しい。BMからベンツに乗り換えか?
とはいえ、EBMの卵焼き器とはもう10年の付き合いだ。はじめて手に入れた銅鍋だから、焦げを金だわしでこすってしまったり、強火にしてしまったり、油を塗って放置したりと、初心者ゆえの手入れが行き届かなかったことは、大いに反省している。この経験がなかったら、やっぱり卵焼き器は銅だよね、とはならなかったのだ。
伊豆山の魚屋・魚久の塩鮭とシラス。鈴廣の木の葉の蒲鉾、湯河原の梅干し、西伊豆の海苔の味噌汁なんぞを蒐集した和定食でブランチとする。
翌日はだし巻き玉子サンドと洒落込んだ。
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