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時速1kmの思考

赤備えの花咲蟹飯

かに飯なのかヤドカリ飯なのか、いまだに謎

店頭では異彩を放っていたんだが、連れ帰ったらややキモいなという印象だったハナサキガニ。GW中に花咲蟹飯と洒落こもうという目論みだった。ハナサキガニの概要を所々からかいつまむとこうある。

・旬は夏(7~9月)。
・かつて花咲半島と呼ばれていた根室半島で水揚げされたことが名前の由来。
・生息域が狭いことと漁獲量が制限されていることから「幻のカニ」とされる。
・タラバガニ科に分類される。
・名前に「カニ」とあるが、ヤドカリの仲間に分類される。

最後の一文は想定外だった。
カニ飯がヤドカリ飯になってしまうではないか。
「聞いてないよ~」という声が脳内にこだまする。

出鼻をくじかれた感が否めなかったが、しぶしぶ湯を沸かし、3%の塩を加えてハナサキガニを放り込む。黒ずんだ装甲が秒で鮮やかな朱色に染まり、戦国の機運高まる。赤備えは圧倒的に強いのだ。

ハナサキガニ, 花咲蟹ハナサキガニ, 花咲蟹
ビフォーアフターハナサキガニ
ハナサキガニ, 花咲蟹
10分ゆでて5分放置

死んでもなお、食われてなるものかというオーラを全身から放っている。さすが精鋭と呼ばれる赤備え、攻撃の手を緩めることはない。なんせ脚の関節をひねるにもトゲが指に刺さり、かなり厄介な御仁と言わざるをえない。

ハナサキガニ, 花咲蟹
カニ汁が飛び散るのでご注意ください

GWは天気が崩れるという予報だったが、奇しくも前半は快晴続きだった。こんなことをしている場合か?と疑念がちらほら頭をかすめるが、もろもろ手遅れだろう。

疑念を払拭できないまま身をほじくり出したのち、殻はまた酒とともに煮込んでエキスを絞りとる。相模湾を目の前にオホーツク海を胸一杯に吸い込んだ。

冷ましたゆで汁、蟹のエキスをザルで漉し、日本酒と薄口醤油で濃い吸い物くらいの味付けになおす。
米2合に、出汁と羅臼昆布をひとかけら落とし、土鍋で炊く。北海道同志で相性はいいだろう。
炊きあがり落ち着いたところでカニの身を散らし、バターをひとかけら忍ばせ、その上に甲羅をのせて蒸らす。そういえばバターも道産だ。こうなると土鍋のなかは北海道物産展状態である。

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安心してください。カニ、入ってますよ

友人が来熱した子どもの日。さんざ食って飲んだあとの〆に花咲蟹飯を披露した。
思わずあがる歓声は、やはりカニならではの底力なんだろう。ズワイガニと比べてややクセが強い印象だったが、バターという好敵手が現れ、せめぎ合ったのち互いのクロスカウンターがヒット、同時に昇天していった、そんな光景が浮かぶ味だった。
ハナサキガニがヤドカリの仲間だということは、友人には秘密にしておいた。

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ベレー帽スタイルの花咲蟹飯

北海道ではハナサキガニを使った鉄砲汁という郷土料理がある。まぁ、カニの味噌汁なわけだが、次回は殻出汁でこちらをつくってみたい。

花咲蟹, ハナサキガニ, 蟹飯, かに飯
蟹飯


3年前のGWもカニをほじくっていたことが判明。いまだに連休をうまく使いこなせていないようだ。
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熱海製麺で食す、相模湾印の濃厚魚介ラーメン

伊豆山の魚屋・魚久で熱海製麺の生ラーメンをみつけた刹那、貯金を全額ひきおろす時がきたと確信した。
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冷凍貯金しておいたのは、チダイが7尾に、ホウボウが1尾のアラをこんがり焼いたものだ。熱海では金目鯛ラーメンが名物なので、チ鯛ラーメンもありに違いない。

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熱海製麺のラーメン

沸騰した湯にアラをどさっと入れ、使いかけのタマネギ半個、大根の皮、干し野菜寸前のミニ人参2本、ニンニクの皮、ショウガの薄切り、一番出汁をとったあとの昆布を投入。

ところで以前、私は海の家系ラーメンが好物だと書いたことがあるが、横浜出身の家人は生粋の家系ラーメン党である。こってり白濁したスープがお好みだ。
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先月の終わりに会社で不本意な事案に巻き込まれ殺伐としていた家人。ここは濁りきったスープでささやかなるエールを送ってやりたい。強火でぐつぐつと炊く。

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相模湾スープ

アクをとりつつ、水分を足しつつ、1時間。あられもない相模湾の海が部屋中を席巻した。ザルにキッチンペーパーをかましスープをこして、麺に付属していた醤油ダレを加える。

俄然ラーメン屋っぽくなってきたではないか。ここで麺を2分30秒ゆがき、ちゃっちゃっと湯切りすると同時に丼鉢にスープを注ぎ・・・お一人ラーメン屋は忙しないな・・・麺をふわりとかぶせ、菜箸で折りたたむ。トッピングは葱のみのシンプルラーメン一丁あがりだ。

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相模湾印の魚介ラーメン

貯蔵性と簡便さが合わさって、ついついマルタイラーメンに走りがちだったが、この生麺はうまい。歯触りがいいし、唇にあたる滑らかさが心地よい。すすったときに爆ぜる感じもおてんばでいい。やっぱり生麺はいいもんだと納得できる味だった。

スープは超がつく濃厚さだ。煮詰まった相模湾の旨味がぐいぐい迫ってくる。腐っても鯛とはよくいうが、小さくても鯛なんだろう。一本筋の通った正調な魚介出汁だ。
惜しむらくは麺付属の醤油ダレを二袋入れてしまったころだ。当たり前だが、普通なら付属ダレだけでラーメンスープが完成するのだから、これに追い出汁すれば濃くなるのは当然なのである。

うまい麺が近場で手に入るとなれば、ますますアラ貯金に励まねばならぬ。自分の首をしめるような仕事が増えるばかりで、どうしたものかとは思っているが、このラーメンなら定期的に摂取したい。

蜜柑の花と鯵三昧

週に一度は、新聞やペットボトルといったリサイクル系のゴミを捨てに、湯河原のスーパーを訪れることにしている。ゴミを捨てるだけでポイントが溜まるというシステムが、自称ポイント乞食である家人のガッツに火をつけてしまったのだ。

通常運転なので諦めつつも、車で引率してくれるのはありがたい。このスーパーは魚屋も肉屋もたいへん充実しており、我が家の生命線ともいえる存在になっている。だが残念ながら、その日はめぼしい魚に出会えず、ボウズで店をあとにした。伊豆山の魚屋・魚久ならきっとなにかあるだろうと、車を走らせる。

閉店間際にもかかわらず、魚久は混んでいる。仕事帰りであろう面々が立ち寄るのであろう。逆に執行猶予が与えられるため、じっくりと魚を観察できるこちらとしてはありがたい。惣菜はほぼ売り切れだ。
悩んだ末に鯵を3尾、塩鯖、豆腐を購入する。そういえばアジフライが食べたかったのだ。

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産卵期だろうか、まるまる太ってた

家につくやいなや鯵を三枚おろしにする
驚いた。臭いがまったくないのだ。魚を触ればもれなく手に臭いが移るものだと思っていたが、それがない。そして薄いピンク色をした身はどこまでも清らかだ。すべて油に投入してしまうには乱暴すぎやしないか。
急遽、1尾だけ刺身へと梶をきる。

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鯵アラ汁

頭とアラも使ってしまおう。火を通してしまったほうが、ゴミ収集日の関係上なにかとよい。
霜降りしたアラは酒と昆布ひとかけらを加えて、20分ほど煮出す。船場汁にすべきか、味噌仕立てにすべきか岐路に立たされるが、今日は後者で手を打った。具は大根とネギ。

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鯵刺身とアジフライ

刺身は薄切りにしてネギとショウガを添え、アジフライは天ぷら粉をバッター液にして揚げる。いまはやすやすと卵は使えない。

「全部刺身でもよかったなぁ」と家人は口惜しがった。「これは揚げるにはもったいないヤツ」という評だ。たしかに脂のノリは最高潮だし、薬味が邪魔になるほど爽やかだし、熱々の白米にバウンドさせて口に運べばおもわず鼻息が漏れてしまう、そんな鯵だった。

少ないからとお互い遠慮がちに箸をうごかしていたが、きっとこれぐらいが適量だろう。「もうちょっと食べたい」それくらいがちょうどいいのだ。

庭の柑橘の花びらが落ち始め、甘い香りをふりまいている。この時期の鯵は少々値が張っても買うべきだということがわかっただけで、人生の具合は少々よくなる。

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不本意なマン腸のトリッパ

マンボウ, マンボウの腸
マン腸のトリッパ

マンボウの腸に再会したら、試してみたい料理があった。
トリッパだ。ハチノスをトマトベースで煮込んだこのイタリア料理は、時間がかかるものの簡単で酒にも合うゆえ気に入りの惣菜のひとつだが、ハチノスを手に入れるのが一番の難関であったりする。案の定、熱海ではいまだお見かけしていない。
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ところがマンボウの腸(以下マン腸)とはあっさり再会を果たし、先日は3パック、計500g求めた。
よくあらって、香味野菜とともに2時間は煮込む。

結果からいえば、まずくはないが、特別うまくもなく、「ボタンを掛け違えたトリッパ」という印象だった。
魚介由来の香りはなんだかツナっぽい雰囲気もあり濃厚さが足りない。ゆえに食べ応え的にも物足りず、柔らかく煮えたが、とろけるような食感でもない。
そもそもまったく違う料理が出来上がった。そんな感じだ。

マン腸はあの歯ごたえがあってこその食材なんだと確信する。トマトソースと合わせるならさっと火を通せるカタプラーナのほうが相性がよかったかもしれない。

ということで、次回のマン腸料理はさっと火を通す方向に切り替えていく予定だが、ここまで読んでくださったおそらくマンボウ好きに違いない稀人には申し訳ないので、レシピも残しておく。

マン腸のトリッパ

マンボウ, 腸
マンボウの腸のトリッパ

材料

マンボウの腸 500g
レモン 1/4個・皮ごと 下ゆで用
ローリエ 2枚 1枚は下ゆで用、もう一枚は煮込み用
タマネギ 1/2個 みじん切り
セロリ 1/2本 みじん切り
人参(ミニサイズ) 1本 みじん切り
ニンニク 1片 みじん切り
白ワイン 100cc
トマトソースorホールトマト 200cc トマトソースのつくりかた
塩・胡椒 適量
オリーブオイル 大さじ3
ローズマリー(フレッシュ)と乾燥オレガノ 少々

つくりかた

マンボウの腸を下ごしらえする
  1. マンボウの腸(以下マン腸)は、一握りの塩と片栗粉を揉み込む。泡が立ってにちゃにちゃしてきたら、水できれいに洗い流す。
  2. 鍋に水、レモン、ローリエを一枚加え沸騰させ、マン腸をゆでる。アクができったら洗い流し、ザルにとっておく。水気がとれたら細切りにする。
  3. 鍋にオリーブオイルを加え、香味野菜を弱火でしっかり炒める。
  4. マン腸、ローリエローズマリーオレガノも加え、しっかり炒める。
  5. 白ワインを加え、煮立たせる。
  6. トマトソースも加え、マン腸がひたひたになるほどに水を加えて、ふたをして弱火で煮る。
    2時間ほど煮込むが、水気が足りなくなればその都度加える。
  7. 塩・胡椒で味を調える。

ジューシーな干物に豆腐とキノコのあんかけスープ

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エボダイの干物@伊豆山・魚久

珍しく家人は出勤したので、夜は独り飯だ。こんな日は早風呂で汗をかき、景気よく缶ビールをあけ、腹が減る頃合いに台所に立てばいい。むろんできる限りの手抜きは忘れてはならない。

麦酒片手に冷蔵庫を物色。奥に白いビニール袋で包まれた何かを発見する。はて、なんだろう。
開けてみると、数日前に伊豆山の魚屋・魚久で求めたエボダイの干物と半丁の豆腐が入っていた。すっかり忘れていた。物忘れは問題だが、このちょっとした発掘感は嬉しい。夕飯は決まりだ。

おなじみKAN焼き上手エボダイをじっくり焼いているあいだ、豆腐の調理にとりかかる。この豆腐は下多賀で手作りしているものらしく、一見やや粗い表面をしているが、セロハンを脱がせば実はぷるんと柔い絹豆腐だ。

豆腐粥という食い物がある。小さな賽の目に切った豆腐をくず湯であたため、塩やショウガをたらして食べる。江戸の料理本豆腐百珍』に掲載されているが、米を豆腐に見立てたなかなか粋な食い物だと思う。
二日酔いやら病み上がりにこそ真価を発揮しそうな汁物だが、独りによる開放感と飲酒で過剰にぴんぴんしている自分には役不足と思われたので、水の変わりに出汁を、そしてキノコで栄養を補うことにした。

エボダイの干物定食の出来上がりだ。
干物とは思えぬジューシーなエボダイ。干からびてなければ、レアでもない。絶妙なところを突いてくる。醤油など不要。飯がなくてもパクつける、いい塩梅の塩加減だ。

かつて徳川家康が「天下一の美味はなにか」と家臣たちに尋ねたところ、家康の側室・お梶の方は塩だと答えた。塩がなければうまい料理はつくれない。では「天下一の悪味はなにか」と問われると、それも塩だと答える。塩が多すぎる料理は食えぬということだ(『故老諸談』)。

身も心にも健やかさを与えてくれる、そんな独り飯だった。
満足感に浸りながらも、魚久で狙うべき次の獲物、ではなく干物を考えているところだ。

豆腐とキノコのあんかけスープ

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豆腐とキノコのあんかけスープ

材料

豆腐 半丁 賽の目
キノコ ひとつかみ シメジ、エノキ、椎茸などを少しずつ
出汁 300cc 出汁のとりかたはこちら
 ●塩 小さじ1/2
 ●薄口醤油 少々
 ●みりん ひとたらし
水溶き片栗粉 小さじ2 水と片栗粉を1:1で混ぜたもの
ショウガの絞り汁 少々
ミョウガと紫蘇 少々 千切りにして水に晒しておき、水気を切ったもの

つくりかた

  1. 出汁を沸かして、調味料で味付け。豆腐とキノコから水気が出るのでやや濃い目を目指す。
  2. キノコを加えて煮立ったら、水溶き片栗粉でとろみをつけ、いちど沸騰させる。
  3. 豆腐を加えてあたためる。味が足りなかったら薄口で調整。ショウガの絞り汁、好みで青菜や薬味を加える。