たけのこ料理の代表格である若竹煮。
かつて教わったやり方は、たけのこを薄味で炊いて味を含ませてから、新たに出汁を炊いてワカメとさっと合わせるものだった。繊細な香りが口のなかに広がり、あぁ、しみじみ旨い。「こーいうのでいーんだよ」と日本人である喜びを噛みしめる一品だ。
上品と滋味が売りの料理なせいか、喰うシチュエーションというのも大いに関係してきそうだ。たとえば、小料理屋で女将が「季節もん少しだけどどうぞ」なんて小鉢で差し出してきたら胸射貫かれるだろうし、日本庭園を臨む席で漆器の椀に盛られてくれば、それこそ慈しむようにゆったり春を味わうだろう。
これが家では難しい。たけのこに生活感は似つかわしくないのだろうか。大鉢に若竹煮を大盛り風情だと、どうも箸がすすまない様子の家人だ。このままでは「オレはパンダじゃねぇんだ」とボイコットされる恐れありと不安になってきたので、あえて好物の鶏団子を紛れ込ませてみた。
通常、つくねには卵白と片栗粉少々でまとめるが、玉子の在庫が2個という窮状にあったため、麺棒でしっかり練って粘りをだしたが、特に問題ない。出汁につみれを落とし、たけのことワカメをさっと煮たらできあがりだ。
鶏由来の旨味と脂がたけのことワカメにねっとりと絡みつき、とても力強い、プリミティブな若竹煮になった。「こーゆのもいいんだよ」とやたら米がすすむおかずで、珍しくたけのこも完売御礼だ。
鶏つくねの若竹煮
材料
鶏ひき肉 | 200g | |
●砂糖 | 小さじ1 | |
●塩 | 2g | |
●長ネギ | 5cm | みじん切り |
●生姜汁 | 少々 | |
タケノコ(下茹済み) | 穂先1本 | 一口サイズで縦に薄切り |
ワカメ | ひとつかみ | |
出汁 | 400cc | |
薄口醤油 | 40cc | |
みりん | 40cc | |
酒 | 大さじ1 | |
砂糖 | 小さじ1~ | 甘めが好きならば砂糖で調整 |
木の芽 | 数枚 |
つくりかた
- 鶏挽肉を練り、調味料を加えさらに練ったら、ネギを加える。
- 出汁と調味料を合わせ火にかけ、一煮立ちしたらつくねをスプーンでちぎりながら加える。
- つくねが白っぽくなったら、タケノコを加え、落としぶたをして弱火で10分ほど煮る。
- ワカメを加えて温まったら出来上がり。