
ここのところ岩手県産の真ダコを見かけるので、よく買い求めている。
土佐酢をかけて食べるが主戦力だが、酢味噌も捨てがたい。とはいえ、なかなか酢味噌に手が伸びないのには訳がある。
つくるのが面倒くさいからだ。
師匠から教えてもらった酢味噌は、味噌と卵黄、酒と味醂などを弱火で練り上げた玉味噌に酢を加えるというもの。閉店間際の店で求めたタコを持ち帰って、その玉味噌を練る気力が残っていない。
なぜプロは味噌に卵黄を加えるのだろう。
よく耳にするのは、「味がまろやかになる」「色艶がよくなる」という理由。たしかにその通りなんだが、こちとら家庭の台所。プロの厨房のように毎日玉味噌を使うわけではない。しかも、卵黄がはいることによってデメリットも生じる。
まずひとつに、保存性だ。
いくら火を通しているとはいえ、卵黄入りの味噌は痛みやすい。冷蔵しても保存期間は短くなる。「これ、いつのだったっけ?」化石のような味噌を冷蔵庫から発掘・・・・・・という未来予想図がたやすく描かれる。
次にアレルギーの問題もある。
ちょっと高いレストランなら予約する時点でアレルギーの有無を尋ねられる。アレルギーの原因は多種あるが、厚生労働省によれば、正確な人数までは把握できていないものの、卵によるアレルギーは高確率を占めていた。卵アレルギーの友人には出せないな。
極めつけは宗教や文化的な壁だ。
精進料理では卵を含む動物性の食品は禁忌とされるので、そもそも卵を使わないはずだ。ヴィーガンが頼んだ野菜料理に卵を含んだ味噌が出されても、まぁ本人も気づかないとは思うが、主義には反するだろう。インバウンドの波が押し寄せている昨今・・・・・・いや、日本人だってどれだけそのあたりを理解しているかは疑わしい。インバウンドだの多様性だのもろもろ配慮が必要な時代、玉味噌には卵黄を使わないほうがリーズナブルなんじゃないか!?
……と、もっともらしい御託を並べたところで、卵黄を使わない酢味噌を決行する。
すり鉢に、常用の田舎味噌と砂糖を加え練り、それに煮きった同割りの味醂と酒を加えてする。砂糖がすっかり溶けたら、穀物酢を少々たらして味を整える。味噌によって塩気と甘みが違うので、正確に分量を示すのが難しい。
煮きり味醂・酒は冷蔵庫に常備してある。お浸しに忍ばせれば出汁の風味を壊さずにぐっと旨味が増すし、醤油と割って漬けマグロを仕込んだりと、ワンオペには頼りになる自作調味料だ。
最後に練り辛子でパンチを添える。
konpeito.hatenablog.jp
薄く切ったタコの頭に酢味噌をかけ、友人宅に成った青柚子を散らす。彼は味噌ラーメンに粗くすりおろすとめっぽう旨いと言うが、とにかく味噌と青柚子の相性たるやすさまじく、この季節でしか味わえない絶妙の取り合わせといえよう。
「玉味噌に卵黄は使わなくても成立する」と声高に宣言するに勇気はないが、あり寄りのありだ。