" "

mogu mogu MOGGY

時速1kmの思考

紫蘇の実の塩漬け

紫蘇の実の塩漬けと河豚雑炊
飯のお供に紫蘇の実

二日酔いの朝のことだ。茶碗がたったひとつ、シンクに転がっていた。なんだこれは? 流行りの座敷童か?
まったく身に覚えがないが、茶碗は自分専用のものなので、家人の仕業ではないようだ。

いったい何を食べたのだろう?
バグった脳みそをカフェインでドーピングさせて記憶をたどるものの、なんの手がかりもない・・・・・・携帯を開いてみると、証拠の数々が露呈した。

写っていたのは雑炊だった。
ご丁寧に調理の様子まで撮影している始末で、そのほとんどがぶれぶれで昨晩の酩酊ぶりがうかがえる。
写真によると、冷凍しておいた河豚の煮こごりに火を入れ、洗った冷や飯をぶちこみ、溶き玉子でまとめている。

酒のせいで塩気が足りなかったのか、トッピングした紫蘇の実の塩漬けがいつもより多い。さぞ旨かっただろうなと推察する。

もともと三島食品のふりかけ「ゆかり」を大袋で求めるほど紫蘇好きなんだが、生特有のソフト食感が売りの塩漬けも常備しておきたいご飯のお供のひとつだ。

紫蘇の実の塩漬け

紫蘇の実の塩漬け

紫蘇の枝から実を指でしごき落とす。

紫蘇の実の塩漬け

ゴミを取り除いて重量を計る。漬ける塩はこの重量の25%だ。

水を数回変えながらもみ洗いする。
念を入れるならば、さらに水につけて落としラップをして一晩おき、アクを抜く。

翌日、アクで水が黒ずんでいるので、もういちど水で洗い、さらに塩を少々ふって最後にもみ洗いをしたら、ザルにとり、水をきっておく。

次に、沸騰したたっぷりの湯と氷水をはったボウルを用意する。

紫蘇の実の塩漬け

紫蘇の実をさっと茹でる。時間にして数秒でパッと鮮やかな緑色になるはずだ。

紫蘇の実の塩漬け

氷をはった水で紫蘇の実を急冷し、親の敵ほど力をこめて水気を絞る。

紫蘇の実の塩漬け

最初に量った実の重量の25%の塩を混ぜる。

紫蘇の実の塩漬け

煮沸した瓶にぎゅっと詰めたら出来上がり。

紫蘇の実の塩漬けアレンジ

ヤリイカのペペロンチーノアジフライとタルタルソース
ヤリイカのペペロンチーノと鯵フライ

飯のお供として食べるのは王道だが、調味料としてもなかなか使える。たとえばペペロンチーノのアクセントにも使えるし、なかでも推しなのがタルタルソースで、ぷちぷち食感が見事にマッチしていた。
konpeito.hatenablog.jp

なんだかんだとあっという間に食べ終わってしまい、最後のほうは見つからないように冷蔵庫の奥に隠していた始末。次回は瓶一杯につけたいと思う。

紫蘇の実の塩漬け
紫蘇の枝と猫

実をとりおわった後は紫蘇の枝じゃらしとして有効活用。すぐに飽きた。

鯛アラと本シメジの炊き込みご飯

鯛アラと本シメジの炊き込みご飯

一回目のワクチンが終了した。横浜市の予約サイトはコロナ禍の生活なかでいちばんストレスフルかつ残念な出来映えだった。
よく政治家が、国民にご不便をおかけして申し訳ないと陳謝しているが、このサイトは最たるものだと思う。これでデジタル庁を立ちあげようなんて大丈夫か?と訝しんでいた矢先、そのトップが有料写真を無断掲載しているズッコケぶりである。もうAIとかITとか横文字以前の話である。
まあいい、話を戻そう。

正直、接種会場へ出向くのも気が進まなかったが、実際はトヨタ式流れ作業のように接種は進み、会場へ入ってからから出るまで、ちょうど30分だった。
医療従事者はもちろんのこと、会場内が混乱せぬよう動線をしっかり管理しているスタッフの皆さんには頭がさがる。

翌日、接種した左腕がじくじくと痛み出す。寝返りをうつにもオッ!と声が漏れてしまうほどだ。晩飯は惣菜で済ませるかと、買い出しにでる。

ところが、あろうことかそんな日に限って天然の真鯛が破格の990円。さすがに今日はまずいとスーパーを一周して気を落ち着かせるものの、やはり気になる990円。

この魚屋は氷を敷いた桶に丸の魚を陳列する様式で、顔を左にしてやや魚のボディが重なるように美しくディスプレイしてある。これはお触り禁止という無言の圧力である。
となると魚の顔と推定全長だけで選ぶことになる。

天然の真鯛には時折タイノエと呼ばれる寄生虫が口の中に住みついている。まさに未知との遭遇で、初めて当たった時は出刃で指を切り落としそうになった。出会い頭にエイリアンはひるむ。
つがいで寄生しているので昔は縁起が良いとか言われていたし、タイノエにも何かしらの生存意義があるだろうが、実際気持ちの良いものでもなく、寄生された魚の方も栄養をとられてしまう。

つい先日、TVでミシュランレストラン御用達の目利きの魚屋が市場で魚を選定しているシーンを見たばかりだった。たしか「魚は顔で決まります。小顔がいい」「顔が痩せているのはタイノエが寄生している可能性がある」というようなことを話していた。
小顔と痩せ顔をどう見分けるかは素人にはさっぱりだが、彼はさらに魚の肛門に指を突っ込んで匂いを嗅ぎ、鮮度を確かめる念の入れようだった。
さすがにお触り禁止のこの魚屋で、タイの肛門に指を突っ込むわけにもいかず、たとえ突っ込めたとしても鼻利きするのはそれこそ不可能であろう。

ということで、推定全長が大きそうな、目が合った真ん中のタイの頭を引っ掴んだ。

左腕が上がらず末期状態のなか、とりあえず内臓だけは取っておこうと気力をふりしぼる。
タイノエはおらんかった。さて、飯をつくろう。
とにもかくにもワクチン1回目が終わり、めでタイ。

鯛アラと本シメジの炊き込みご飯

鯛アラと本シメジの炊き込みご飯

タイを三枚におろし、骨と昆布、酒で出汁をとる。くわしくはこちらを参照いただきたい。
konpeito.hatenablog.jp

鯛アラと本シメジの炊き込みご飯

出汁を漉す。

鯛アラと本シメジの炊き込みご飯

骨から身をちまちまと取り出す。

鯛アラと本シメジの炊き込みご飯

本シメジは薄切りする。このまま炊き込んでもいいが、今回は少しだけシメジに味をいれておくことにした。

鯛アラと本シメジの炊き込みご飯

魚出汁:薄口醤油:みりんを8:1:1の割合で沸かして、シメジさっと煮る。

鯛アラと本シメジの炊き込みご飯

鍋ごと水をはったボウルにつけて味を含ませる。

鯛アラと本シメジの炊き込みご飯

シメジを水切りする。

鯛アラと本シメジの炊き込みご飯

シメジを炊いた汁に魚出汁を加えて、2合分の分量にし味見。吸い物をよりややしょっぱいくらいを目指し、塩もしくは薄口少々で調整する。

鯛アラと本シメジの炊き込みご飯

土鍋に洗った米、シメジ、ほぐしたタイのアラをのせて、出汁を加えて炊く。
千切りした紫蘇をのせて、いただきます。



長谷園 土鍋 ご飯鍋 かまどさん 二合炊
21 cm 直火 専用 黒 伊賀焼 日本製 鍋敷き & しゃもじ & レシピ 付 CT-03

しめサバを愛でる

しめ鯖

しめサバを好きになったのは、30代もなかばすぎたころだ。
兵庫の山奥に住んでいた祖母は、かつて年に数回サバの棒寿司を送ってくれた。きっと得意料理だったんだろう。いや、もしかしたら東京で暮らす母の好物だったからなのかもしれない。田舎ならではの気遣いなのか、毎度ダンボールの底には丸太のような棒寿司がびっしりと敷き詰められており、緩衝材としてのお菓子が自分のお目当てだった。

そして朝・昼・晩と棒寿司が食卓に並ぶことになる。
カレーなら三日三晩でもやりすごせるが、サバが一週間も続くとうんざりしてくるものだ。部屋のなかでサバが泳いでるんじゃないかってくらい酸っぱくて生臭い。やがて一切れ食べるのもやっと、あげくに見るのも嫌になってしまった。

魔女の宅急便」で主人公キキが、優しい老婦人に頼まれてニシンのパイを届けると、孫が「アタシこのパイ嫌いなのよね」とそっけない態度をとるシーンがあるが、あの気持ちはわからんでもない。ただ自分の場合はついぞ祖母にそれを告白できなかったが。

「サバの生き腐れ」と言われるように、サバはあっという間に腐敗する。屋久島の漁師いわく、刺身で食べるなら釣って10分以内が原則だ。つまりサバを生で食うならの死後硬直したゾンビが最上ということになる。

そんなサバがなぜ関西の山奥の家庭でせっせと製造されているかといえば、北陸の海でとれたサバが塩漬けにされてから内陸に運ばれ、そこで酢でしめて寿司にしたという経緯があるらしい。
サバの死亡推定時刻を偽装するためなのか、当時の酢の塩梅はどぎついものだった。サバは真っ白でしこしこと歯ごたえがあり、これが伝統的な祖母の味だった。普通の宅急便でも送られてきても、常温でもびくともしない、屈強なサバだった。

流通の進歩だろう。最近はうまいしめサバを出す店が増えてきた。働いていた店では金華サバを使っており、とにかく人気だった。みなが旨そうにしていると食べてみたくなるもので、ようやくしめ鯖への負の感情がプラスに転じている。
酢で締まりすぎていない、半生くらいのしめ具合が最上だ。

ところで、福島の道の駅よつくら港で求めたしめサバは抜群にうまかった。「しめサバに合う絶品のとろサバが手に入らないと社長がつくってくれないんですよ」と社員が嘆くほどこだわりの商品だったらしく、両親への土産もこれに決めた。
数日後、父がこんな感想をもらした。「こないだくれたしめサバは旨かったなぁ。今まであんまり好きじゃなかったけど、あれは旨かったよ!」
父も実は無理してしめたサバを食べていたことが、ここにきて判明する。

しめサバをつくる

しめ鯖

サバをレンズごしに眺めてみると、なんともいえない美しい景色で感心した。今日はサバを愛でる気持ちでサバをしめていきたい。

サバを三枚におろす

しめ鯖

捌き方は基本のアジと同じ。
ウロコが細かいので包丁で丁寧にとりのぞいたのち頭を切り落として内臓を抜く。血合いの部分も含めてきれいに洗い、水分を取り除いてから三枚におろす。
小骨は抜き取らない。
アジよりも身が柔らかいので見割れしやすいので、ややゆったりとさばくイメージで。
konpeito.hatenablog.jp

塩をふる

しめ鯖

塩のふりかたは古今東西、十人十色で興味深い。
サバを塩に埋める旧石器時代タイプ、砂糖と塩の両刀づかい(これは砂糖の脱水効果を狙ったものと思われる)、血合いの部分を重点的に盛り塩するとある寿司屋の大将。
口伝によれば、「サバは血合いが一番匂うから」という理屈らしい。

そこで、塩を敷いたバットに、皮目を下にしておろした身をおき、中央の血合いの部分にこんもりと塩をのせ、それを左右にはらうようにして塩を塗し、冷蔵庫で2時間ほど寝かせた。

洗う

しめ鯖

全体に水気がにじんで塩がとけるようになったころを見はからい、水で塩を洗い流す。皮がやや縮んで、甲虫のようにギラギラしはじめる。
ここで一度凍らせるとアニサキス対策になる。

酢で締める

しめ鯖

生酢を使って短時間でしめる、複数の酢をブレンドして奥行きを出す、締まりすぎないよう薄めるなどなどやり方をあげれば枚挙にいとまがないが、つくづく「しめる」という作業に対する日本人はの並々ならぬ執着に感心してしまう。
最近ではフレンチでもしめサバを出すほど日本人はしめサバが好きだし、しめサバは店の看板メニューになり得るポテンシャルをもっているのだろう。

ずぼらな私は、つくりおきのあら酢をどぼどぼ注ぐ。あら酢は、穀物酢:濃口:砂糖を5:1:1の割合で合わせたもので、春子鯛で紹介したものだ。サバの厚みによって酢につける時間はまちまちだが、まずは15分くらいから顔色をうかがいつつ、表面がうっすら白くなって、なかがほんのり赤いくらいを狙いたい。
konpeito.hatenablog.jp

ねかせる

しめ鯖

酢から引き上げたらキッチンペーパーでふきとり、小骨を抜いてラップでくるんで冷蔵庫へ。晩酌をまつばかりである。

盛る

しめ鯖
しめサバ

薄皮をむいたら適当に切って、実食。
ちょっと締まりすぎたせいか、図らずも懐かしい味だ。
魔女の宅急便」の孫も、今頃はニシンのパイを焼いているんじゃないだろうか……味は人を巡るものなのだ。

カマスは炙った皮が旨い

カマス焼き霜

幼少のころからサンマよりカマスに肩入れしていた。サンマを買おうとする母をなんとか思いとどまらせるべくあの手この手で引き留め、それでもダメならなんとか自分の分だけでもカマスにしてくださいと懇願するほど、私は生粋のカマス派である。

サンマの放つ青魚特有の香りも、大人たちがうまいうまいと貪る苦い腹も、子供の舌には理解不能だったのかもしれない。
それに比べてカマスはどうだ。雪のように白くふっくら焼けた身は口のなかでほろりとほどけていく。
皮の焦げた香りも爽やかだ。

そう、カマスは皮が旨い。肴は炙った皮でいい〜♪ と鼻歌が出るほどだ。だから刺身も炙った皮つきが最高なのだ。香ばしさと半生の饗宴。これぞ大人の楽しみといえるんじゃないか。キンキンに冷えたビールがやたら進む。
ついでに内臓が少なくてさばきやすいうえ匂いもあまり強くなく、ゴミ処理が楽なのもポイントが高い。カマス万歳である。

秋といえばみなサンマばかりに御輿に担ぎ出すけれど、カマスだって実は秋を告げる魚。
話はずれるが、近年のサンマの高騰ぶりには眩暈を通り越して卒倒寸前である。高級魚とは言わないが、おいそれと手がでなくなったのは確か。これに乗じてサンマ派がカマスに流れ込んでくるのではないかと、内心ひやひやしている昨今だ。

カマスの焼き霜づくり

カマス焼き霜

三枚おろしにする。

やりかたはアジとほとんど変わらないが、カマスの捌きかたについては『さかな割烹』(p23、かますの焼き霜づくり)がビジュアル的にわかりやすい。
三枚におろしたあと、残った小骨を骨抜きで丁寧に抜き取ること。




出版社 ‏ : 柴田書店 (2019/5/25)
単行本 ‏ : 196ページ
著 者:◎原田 実(はらだ・みのる) ◎武澤剛志(ぶざわ・つよし) ◎山本晴彦(やまもと・はるひこ)

konpeito.hatenablog.jp

皮を炙る。

皮目に塩を少々ふり、火で炙っていく。バーナーや、魚串に刺して直火で炙るなどやりかたはいろいろあるが、てっとり早いのが目の細かくない網にのせてガスの直火で炙ってしまうやり方だ。脂がだらだら流れ落ちないので、コンロもさほど汚れない(もちろん炭火で焼くのに越したことはないのは言うまでもない)。

一口大に切る。

カマス焼き霜

皮が焦げたいい香りがたってきたら、すぐにまな板に移し、包丁の先のあたりで、上から押さえるようにして、ひと思いに切る。包丁を前後にギコギコ動かすと皮が破れやすいのだ。とはいえ破れてしまったやつは下のほうに隠してしまえばいいだけのことなんだが。

醤油とワサビもうまいけど、ポン酢とも相性が抜群である。
konpeito.hatenablog.jp

鴨せいろもいいけど、鴨南蛮も捨てがたい

鴨南蛮

鴨せいろはうまいが、鴨南蛮も捨てがたい。
このあたりのスーパーでは、鴨がよく特売になっている。しかも特売からすぐに半額になるという奇妙な現象が起きていて、そんな残った鴨を買い占めて翌日の昼食にするのがコロナ渦の楽しみのひとつになっている。

鴨南蛮のコツは3つあるが、ふたつは鴨せいろに引き継いでいる。
konpeito.hatenablog.jp

ひとつに、脂身の有効活用。
ふたつにネギのダブル使い。

そしてもうひとつ付け加えたいのが、鴨肉を醤油で洗うこと。
温かい蕎麦の場合、スープは飲めるくらいの味付けだから、ただ鴨肉を入れただけでは味がぼけてしまうのだ。そこで、薄切りの鴨肉をスープでしゃぶしゃぶしたのちひきあげて、少々の濃口醤油をまぶしておくことにした。
その間に蕎麦を茹でたりしておけば鴨にほどよく味がなじみ、つゆを飲んでも旨し、鴨を食べても旨しの塩梅になる。

鴨南蛮のつゆの比率

基本は出汁:醤油:みりん:酒を12:1:1:0.5の割合で合わせているが、これだと若干色が強すぎるので、私は醤油を薄口と濃口の半々で合わせている。

つまり、

出汁 薄口醤油 濃口醤油 みりん
12 0.5 0.5 1 0.5
720cc 30cc 30cc 60cc 30cc

鴨南蛮

材料

鴨肉 150g〜
濃口醤油 大さじ1〜
ネギ 1本 焼きネギと千切り
ユズの皮 少々
蕎麦 2束
めんつゆ
 ・出汁 720cc 昆布とカツオの出汁
 ・薄口+濃口醤油 各30cc
 ・みりん 60cc
 ・酒 30cc

つくりかた

  1. 鴨肉の余分な脂やスジをとりのぞき、薄切りにする。皮の部分のみに切れ目を入れておくと食べやすい。
  2. 筒切りにしたネギは焼いて、生のネギは千切りにして洗い、水をしっかり切っておく。
  3. めんつゆを合わせ、鴨の脂とスジ、焼いたネギを加えて一煮立ちさせてアクをとる。
  4. 鴨の生肉を麺つゆでさっと火を通して、濃口醤油をまぶしておく。
  5. 蕎麦をゆがいて、よく水洗いしてしめておく。
  6. 食べる直前に蕎麦を温めて丼に盛り、めんつゆをはり、鴨、ネギなどトッピングする。柑橘の皮を少々削るとさらにうまい。