最高のポン酢——それはまろやかな酸味で料理を引き立ててくれる名バイプレーヤー。シンプルな食材、混ざりっけ一切なしのポン酢は、背筋がシャキッと伸びるような爽快さと、胃袋の細胞が覚醒するような滋養があり、「もうこのポン酢さえあれば!」という気にさえなる。
つくりかたはとても簡単だけれど、出来の良し悪しで料理全体の評価も左右してしまうのがポン酢の恐ろしいところでもある。
この道50年の板長のポン酢へのこだわりは鬼気迫るものがあった。若いころは季節ごとに配合を微調整したポン酢を仕込んでいたという。なんだか気の遠くなるような話なんだが、ついには冷蔵庫がポン酢だらけになり収拾がつかなくなったので、今ではざっくりと夏用・冬用の二種類で使いわけている。
ポン酢は体の調子を整えてくれる。医食同源の思想にのっとって、金を払って食べにきてくれる客や家族、親戚の健康を願い、板長はポン酢に妥協を許さない。
妥協しない、最高のポン酢とは?
そんなポン酢をつくるにはまず、最高の「だいだい」果汁を手にいれなければならない。昔は築地の八百屋でも手搾りのだいだい果汁が売られていたが、これが相当に骨の折れる作業らしく、高齢化とともにその幻のだいだい果汁は姿を消してしまった。
そこで次点にあがってきたのが岸田商店のものである。契約農家で収穫した厳選されただいだいを一つ一つ手で皮を剥き、昔ながらの製法を守っているという、八百屋おすすめのだいだい果汁だ。
「だいだい」に妥協できない理由は、食べてみるとわかる。実際、ミツ●ンの柑橘汁でつくったポン酢は(その他の材料・作り方・配合は同じだ)、耳の裏がキーンと痛くなるほどカドの立った酸味だった。ポン酢は寝かせることで酸味のカドがとれてまろやかになるはずなのだが、その工程を経てもやはり耳の裏が痛む。柑橘汁だけでここまで味の違いがでるのかと驚いたものだ。
ポン酢の材料と基本の配合率
ダイダイ汁:濃口醤油:みりん:酒:濃口醤油を1:1:0.1:0.1:0.2
の割合で混ぜ、昆布と鰹節を加えて1週間冷蔵庫で寝かせるだけで最高のポン酢が出来上がる。
濃口醤油が2回登場するが、これは書き間違いではない。二回に分けて配合するのが、このポン酢のミソである。なお濃口醤油はヤマサ、みりんはタカラ、鰹節は築地は秋山商店の鰹上削り(2番)、昆布は真昆布を使っている。
最高のポン酢のつくりかた
日持ちもするし、家族や友人にもお裾分けしたいので業務用レベルの仕込みとなった。
材料 | 量 | 比率 |
だいだい | 1800cc(1升) | 1 |
濃口醤油① | 1800cc(1升) | 1 |
みりん | 180cc | 0.1 |
酒 | 180cc | 0.1 |
濃口醤油② | 360cc | 0.2 |
真昆布 | 20cm | |
鰹節 | 手づかみで7杯 |
寸胴鍋に、材料を上から順番にいれて混ぜていく。
昆布はエキスがよく出るよう、切り込みを入れておくのがプロの技だ。
最後に鰹節をたっぷり入れて、サランラップで蓋をしたら冷蔵庫で一週間寝かせよう。このときに是非、味見してみてほしい。一週間後には香りも酸味もまったく別物になっているから面白い。
一週間たったら静かに漉して出来上がりだ。
冬のポン酢もぜひ。
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ポン酢をつかった簡単な家飯
館ヶ森高原豚のタリアータ
薄切りのタマネギを皿にたっぷり敷いて、しっとりピンク色に焼いた豚ロース肉をのせる。ポン酢を豪快にかけて出来上がり。ワインが合う。
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