明日葉の天ぷらを初めて食べたのは、もう10年以上も前のこと。友人のデザイナーに連れて行かれた原宿の雑居ビルにある八丈島料理の専門店だった。
さくさくに揚がった明日葉は軽やかで、ほろ苦く、野趣あふれている。食べるほどに健やかになる味で、店ではいつも二皿は平らげるほど明日葉の虜になってしまった。
今じゃ健康的なグリーンとしてすっかり市民権を得た明日葉はどこのスーパーでも見かけるようになった。どちらかといえば八丈島や伊豆諸島でとれる島野菜という認識だったが、先日立ち寄った湯河原の直売所で超がつくフレッシュ明日葉を見つけたときは、嬉しくなって思わず大束を摑んでしまった。
頭の中は天ぷら一色だったが、ただひとつ問題がある。あの軽やかさが仇となり、ついつい食べ過ぎて腹をくだしがちなのだ。もう同じ轍は踏むまい。
ということで、手の平サイズを目安に穂先のひとかたまりを天ぷら用に、その他はお浸しにする。
洗った明日葉はステンレスのボウルにいれてラップしておくと1週間くらいは鮮度が保てる、なかなかに強い野草だ。
さくさくな明日葉の天ぷらのコツは3つ。
- 葉に薄力粉をまんべんなくまぶし、余計な粉はしっかりはたく(下粉)。
葉の水分を適度にとれて油はねがなくなるし、衣が剥がれにくくなる。 - 天ぷら粉と水は容量比で1:1.5の割合でさっくりとく。
しゃばしゃばのゆるい衣だが、すでに下粉がついているので衣と緑色のコントラストが美しい仕上がりになる。 - 葉をひろげながら油に落としたら、衣がしっかり固まるまでひっくり返さない。
下粉がついているので、天ぷらをあげるほどに衣は重たくなってしまうのでその都度水で微調整は必要だが、途中から天かす職人に鞍替えするのも一手。
もはや天かすのために天ぷらを揚げているようで本末転倒感が否めないが、冷凍保存しておけばなにかと重宝するのだ。
昼食は蕎麦にしたが、夕食なら天つゆがオススメ。出汁:薄口醤油:みりんを4:1:1で合わせ、さっと沸かして出来上がり。