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時速1kmの思考

ロールキャベツ、クズ野菜スープ仕立て

料理にとりかかるときは、まず野菜を刻むから始めている。
皮ごと専用たわしでよく洗い、皮やヘタ、種をザルに溜めておき、水気が切れたところで冷凍庫に保管しているビニール袋にガサッと入れる。

これを「くず野菜貯金」と呼んでいる。ガチの貯金はさっぱりだが、こっちはすぐに小金持ちになれてお手軽だ。
満期がくれば引き落とし、野菜くず出汁をこしらえることになる。
konpeito.hatenablog.jp

寸胴鍋にくず野菜、水をたっぷり加えて火にかけ、煮えたぎったところを灰汁とりしていたら、家人がふらりと顔を出した。
「こ…これ一体なに!?」

大量の生ゴミが浮遊した大鍋を前に、明らかに狼狽している。ついに見てしまったのですね……と鶴の面持ち。

「いつもの野菜出汁だよ」
「なんだか魔女の鍋っぽいね」

たしかにビジュアル的には『マクベス』の地獄のスープを彷彿とさせるカオス具合だ。困惑するのも無理はない。
残念ながら蛇もトカゲもカエルも入っていないが、黒猫の毛が少々混じっていることは黙っておこう。
弱火に落としてコトコトコトコト1時間。

くず野菜出汁スープくず野菜出汁スープ
くず野菜スープ

漉したスープは黄金色。生ゴミ由来とはおもえぬ美しいできばえだ。
そのまま食べても滋味だが、卵を落としたり、ソーセージを煮込んだり、カレーのベースにと応用範囲は広い。
ちょうど半額の鶏ひき肉が300g、冷蔵庫にあったので、ロールキャベツをつくることにした。


ロールキャベツはご存知、肉だねをキャベツの葉で巻いてブイヨンで煮込んだ料理だが、その起源はトルコの郷土料理のドルマ(肉を葡萄の葉で巻いた前菜)と言われている。私が現地で食べたものはだいたいが冷製で、メインデッシュというより手でつまんで口に放り込む前菜の立ち位置だった。

この「肉を葉で巻いた食べ物」はトルコ周辺のアジアを中心に四方八方に伝播し、ついには極東日本に上陸。昭和にお袋の味として定着したあげくに、コンビニのおでんの具にまで昇華している。腹のあたりで結ばれたかんぴょうが、まさにジャパナイズされた証拠だろう。

ちなみに大日本帝国軍が昭和に発行した『軍隊調理法』では、玉菜巻と称してロールキャベツのレシピが紹介されていた。
肉だねをあらかじめ炒めていること、それにジャガイモが入っている点で、ややコロッケ寄りのロールキャベツになっているが、きっと米やパンは貴重なので芋で腹をふくらせようという魂胆だろう。

軍隊調理法
『軍隊調理法』昭和12年7月26日@国立国会図書館

ところでやはり気懸かりなのは、誰が、いつ、なぜロールキャベツをかんぴょうで結ぼうと思い立ったか、である。昆布巻きよろしく縁起をかついだのだろうか? ググってみたが、見つからない。まぁいい。

鶏肉を使ったロールキャベツは合い挽き肉よりあっさりしているので、バターでレンチンしたニンジンとキャベツを加えてコクを出しているのが今回のポイントだ。

ロールキャベツ、クズ野菜スープ仕立て


材料

鶏ひき肉 300g
小さじ1/2(肉の重量の0.8〜1%)
胡椒 少々
パン粉or冷やご飯or煎った米 大さじ2〜3 パン粉だとふんわり、米だともっちり食感
卵白 1個分
タマネギ(小) 1/4個 みじん切り
ニンジン タマネギと同量 みじん切り
バター 10g
キャベツの葉 4枚 なるべく外側の大きいものが扱いやすい
クズ野菜出汁 適量をお好みで

つくりかた

  1. タマネギとニンジンを耐熱容器に入れ、バターを加えてレンジで2分チン。粗熱をとっておく。
  2. キャベツの葉を湯がき、粗熱をとる。厚い芯は包丁でそぎ取る。
  3. ひき肉に塩、胡椒を加えて練り、粘ってきたらパン粉、卵白、タマネギとニンジンも加えて冷蔵庫で半時休ませる。
  4. キャベツを芯のほうを手前に広げ、俵型にした肉だね(4等分で大きめ)をおき、ぐるり一巻き。
    左の葉を折りたたんで、最後まで巻く。
    右の葉を肉だねの中央に指で押し込む。
  5. 鍋にロールキャベツをきっちり、ぎゅうぎゅうに並べ、クズ野菜出汁を注ぎ、落としぶたをして30分ほど弱火で煮込む。
  6. スープを塩、胡椒で味をととのえる。皿に盛り、好みで粉チーズやパセリを振りかける。