
天気のあまりよくない日にときどき開催されるスーパーの干物祭。本日は金目鯛、ホッケ、アジという王道のラインナップで、どれを選んでも3尾1000円である。
魅力的なのはがぜん金目鯛だ。なんせ丸の金目鯛はサイズにもよるがだいたい一尾2000円前後。普段魚としては高級品だからおいそれとは手出しできない。
わざわざ塩をして干してと手間をかけた金目鯛のほうが安いという点は解せないが、心ゆくまで金目鯛を喰らえるならばと迷いなく金目3枚をカートに入れる。
さぁ、焼こう。
まず魚焼きグリルをかんかんに熱する。こうしておくと、網に干物をくっつきずらいのだ。
金目鯛を二枚、重ならないように、そして焦げやすい尾をグリルからややはみ出すよう首尾良く並べる。
ここからは中弱火で、皮がパリパリになるまでじっくり気長に焼く。
身のほうがじくじくと汗をかいてきたらひっくり返し、あとは乾かす程度に火をいれる。
食卓にあげるころには金目鯛熱はピークに達しており、白飯をたっぷりよそっていざ箸をいれる。
やはり、うまい。ありきたりだが、肉厚でふっくら。旨みがぎゅっと詰まっていい塩梅の塩気。醤油なんていらないいらない。
昔は干した魚なんかに目もくれなかったが、ここにきて干物の旨さとありがたみ(調理が簡易で日持ちする)がわかってきたのは、心技体すっかり干物女と化したせいかもしれない。
困ってしまうのは白飯がいつもの倍速で進むので、半身を食べたあたりで腹が膨れてしまった。
翌日にもちこした干物は干物というより化石といった趣きであまり美味しくない。そこでまだ温もりが残っているうちに、身をほぐしておくことにした。
各自の食べ終えた骨や頭を皿から回収し、鍋に放り込んで水、酒、昆布をひとかけら加えて火にかける。
沸騰する前に昆布を取りだし、灰汁をとりながら30分ほど煮出す。網でこすと干物の残骸由来とは思えぬ透き通った金色のスープがとれた。

翌日、冷蔵庫から出した金目鯛の干物スープはコラーゲンでぷるぷるのゼリー状だ。干物のポテンシャルや底知れず。干物女もまだまだイケるんじゃないかと希望の光が差す。


薄口醤油で吸い物くらいの味に調えたスープに、米とほぐしておいた干物半身、それに針生姜を散らして土鍋で炊き込む。
仕上げに小ネギと海苔をかけて、金目鯛の干物炊き込み飯の完成だ。
金目鯛のスープをたっぷり吸った米が不味いはずがなかろう。一心不乱にかきこんでしまうことになる。そしてまた、米を食い過ぎてベッドに倒れこむダメな干物女がここに出来上がる。
残った飯はお茶漬けにしてもよし、焼きおにぎりにするのも一興だろう。