明日の土曜日、友人が来熱する。隅から隅まで、掃除などせねばならない。庭の手入れもせねばなるまい。飯もつくらねばならない。酒も調達せねばならない。
にもかかわらず、なぜ魚を買ってしまったのだろう。
こんな時に限って、魚が安いのは大変に困るのだ。
湯河原のスーパーで求めたのはチダイ532円、7尾入り。別名、春子鯛(かすご)だ。
現代の市場では真鯛や黄鯛の幼魚もすべて「カスゴ」扱いになっているが、昔は赤味を帯びたチダイの子こそが「春子鯛」を冠したというのは、阿部狐柳*1氏の受け売りだ。
とにかくこの魚と出会ったからには、酢〆にしないと気が済まない性分だ。
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常日頃は散漫としている集中力を総動員して魚の解体にとりかかる。
三枚おろしにし、小骨を抜いたら2%の立て塩につけ・・・(中略)・・・酢で〆たのち、冷蔵庫へ収めて一安心。
のはずだったが、どうも台所が生臭い。
「リフォームしたばかりなのに、この家なんだか生臭いねぇ」などと友人たちに思われたらどうしようという不安に襲われる。
冷蔵庫もゴミ箱もスペースはあまりない。しかもゴミが捨てられるのは、友人が帰る日曜日である。その間、彼らは生臭い部屋に幽閉されることになる。これはまずい事態だ。少しでもゴミを減らしたい。
そこでハッとした。焼いてしまえば冷凍庫貯金できるんじゃないか? 後日ラーメンの出汁にでもしたらどうだろう。ここ熱海では金目鯛のラーメンが名物だ。春子鯛ラーメンもありじゃないか!
さっそく立て塩につけておいたアラの水気をとり、アルミホイルを敷いた天板に並べていく。いったいなにをやっているんだろうと頭に疑問符が浮かんでくるが、知ったこっちゃない。
250度に余熱したオーブンで15分くらいか。換気扇が追っつかないのか、部屋中に焼き魚臭が蔓延し、奇しくも生臭さはかき消された。
アラは見事に干物化している。
唯一の心残りは、アルミホイルをぐちゃぐちゃに丸めてから天板に敷いておくべきだったということ。特に中骨の部分を引きはがすのに苦労してしまった。
あら熱がとれたら、ビニール袋に入れ、冷凍庫へ収める。ゴミもだいぶ減った。もろもろ晴れ晴れとした気分だ。
これなら、いくらでも貯められそうだ。
肝心の金のほうは一向に貯まる気配はないのが残念だ。
*1:『日本料理秘密箱』