フィナデニとは、醤油に酢(もしくは柑橘類の果汁)、唐辛子、タマネギなどを混ぜ合わせたグアムのソースである。唐辛子のはいったピリ辛ポン酢といえばわかりやすいだろうか。肉、魚、米とあらゆる料理に合う万能ソースで、たいていのレストランで料理に添えてある。(写真は Linda's Coffee Shop のフィナデニだ。)
この醤油ベースのフィナデニが登場したのは、そう古い話ではない。そもそもは塩と唐辛子を混ぜただけという、ごくシンプルなフィナデニが大きな転換期を迎えたのは、スペインの統治時代だ。
スペインから「料理にソースにつけて(Dipして)食べる」という文化がもたらされたのち、フィリピンの移民によりココナッツから酒を醸造する技術が持ち込まれた。それを発酵させたココナッツ酢をベースに、塩、レモン、水、唐辛子を混ぜたフィナデニが生まれたのだ。
時はたち、現在のフィナデニを決定的に確立することになったのが、日本が持ち込んだ醤油だ。フィナデニは、アジアとヨーロッパの文化が凝縮された、なんとも異国情緒漂うソースなのである。
黒フィナデニか?
それとも白フィナデニか?
フィナデニがなければ、グアムの食卓は成り立たない。醤油がないと日本の食卓が成立しないのと同じだ。だが日本の醤油と違うのは、各家庭やレストランによってあらゆるバリエーションがあるところだろう。ウィークリーグアムではレストランごとにフィナデニを比較している記事があり、非常に興味深い。
数多のフィナデニを大きく分ける分岐点は、何をベースに構成するかだ。ラーメンの構成要素は麺、スープ、調味料、トッピングだが、味の方向性の決定権を握るのは醤油、味噌、塩といった調味料だろう。
フィナデニも、大別すれば醤油ベースと塩ベースがある。前者を黒フィナデニ、後者を白フィナデニと呼ぶことにする。
黒フィナデニは、主に焼いた肉や揚げた魚といった重い料理に合うと言われている。白フィナデニは焼き魚などのあっさりした料理に付け合わせる。もちろん好みだから、黒フィナデニを焼き魚にかけたっていいのだ。よく脂ののった鯖なんかは、黒フィナデニのほうが合うとおもう。
フィナデニの神髄は、
塩味と酸味の黄金律!
フィナデニはレシピがあって、ないようなものだ。作る人の数だけレシピがあるわけだが、このソースで肝となるのは、塩味と酸味のバランスだ。こればかりは食べる人の好みや体調にもよるし、酢の原材料や柑橘の種類という変数によっても変わってくる。究極的にいえば、天気という変数さえもありうる。
レシピ通りにつくったとしても、うまいフィナデニになるかどうかはわからない。だからフィナデニをつくるときは、一緒に食べる家族の意見を大いに参考にすべきなのだ。
まず、醤油と酢(もしくはレモンなどの柑橘果汁)を1:1の割合でいれてみよう。ここで味見をする。もし酸味がきついと感じたら醤油をたして、2:1の割合にしてみる。もしくはオレンジの果汁をいれて酸味を和らげるのもいい。ここで配合の黄金律が決まれば、フィナデニは99%完成だ。
次に好みの具をいれていく。どれかひとつを選べと言われれば、タマネギはいれたほうがいい。子供が食べるのなら、唐辛子は抜いておくべきだろう。ニンニク、トマト、ネギ、パクチーなど、実験の精神で何でも入れてみる。
チャモロ創作料理で有名なメスクラ(Meskla)のフィナデニ・サンプラー(Finadene Sampler:5ドル)は、大いに刺激になる。それぞれ食材を変えた酸味と塩味で構成される5つのフィナデニ(Guam Diner Newsletter によれば、基本の醤油ベースのほか、ココナッツ酢、アンチョビ、レモン、ディナンシェ*1のフィナデニだ)は、見た目も美しく、食欲をそそる。
前置きがあまりに長くなったが、以上を踏まえ、今回は次の材料でフィナデニを構成した。
フィナデニソースのつくりかた
- 醤油 大さじ2
- 酢 大さじ1
- レモン果汁 小さじ1〜2
- 生の唐辛子 1〜2本(みじん切りと乱切り)
- タマネギ 1/4個(粗みじん)
- アサツキ (みじん切り) 少々
- タバスコ(ロタ島のもので激烈に辛い) 少々(オプション)
ポイントは、タマネギをあまり小さく切らないこと、唐辛子は生のものを使うことだ。すべての材料を混ぜたら、冷蔵庫で冷やしておく。水を使っていないので、それなりに日持ちもするはずだ。グアムではタマネギが醤油で真っ黒になるくらいにまで漬け込んだものさえある。火も使わなければ、漉したりすることもない、このうえなくお手軽なソースなんだがとても重宝する。せっかくなのでフィナデニソースを使った料理も紹介していきたい。
スペアリブのロースト
塩やハーブを擦り込み、オリーブオイルで1日マリネした肉を焼く。フィナデニのおかげで脂の強いスペアリブもさっぱりと食べられるオススメの料理。
鳥モモ肉のガーリックソテー
味付けは塩のみ。ニンニクと一緒にじっくりソテーしたパリパリ鶏モモ肉に、フィナデニを豪快にかける。(パリパリジューシーなチキンソテーのつくりかたもご覧ください)。
鶏ハム、ワカメ、豆腐、トマトの前菜
少しずつ残っていたものを皿に盛り、フィナデニソースをかけて夏の前菜に。そもそもグアムのポン酢なので、和食材にも驚くほど合う。
鯵の塩焼き
フィナデニソースの塩分を考えて、塩は薄めにふって塩焼きに。グアムだったら揚げ魚だろうな。
レッドライスとBBQチキン
やっぱりレッドライスははずせない。フィナデニソースをばしゃばしゃかけて食べると最高だ!
簡単につくれるおすすめグアム飯レシピ
*1:唐辛子のペースト