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時速1kmの思考

金平糖の科学

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/54/Kompeito_konpeito.JPG

寺田寅彦のエッセイ『備忘録』によると、どのようにして金平糖があの毬栗のような姿になるのか、長らく解明されなかったらしい。

さらにいうと、その角の数を決める物理的因子がなにかというのも、長らく物理学上の摩訶不思議だったという。

金平糖について、生涯をかけて研究をしたい学者はいないだろうが、こういった些末なことのなかに、将来の物理学に貢献しうる本質が隠されているかもしれない。氏の金平糖への妄想は深まっていき、ついには生命の起源にまでいきつくことになる。

人間は宇宙へ飛び立ち、数々の病原菌に打ち勝ってきたにもかかわらず、いまだに金平糖の謎が解けないのか!? と思うと、なんだか気が抜ける話だ。

京都にある金平糖専門店、緑寿庵清水のホームページを覗いてみると、そのイガの秘密についてこう書かれている。

簡単に説明すれば、核となる「イラ粉*1」が 釜の上から下へ転がっていく時、鉄板に触れた部分の蜜が乾いて少し固いところができる。
そこがわずかに出っ張るため他の場所よりも蜜がつきやすくなり、突起部分が段々と大きくなってイガになる。釜が傾斜し回転しているので金平糖が転がり落ちていくことでイガが一か所ではなく何か所もできる」と言われています。

 と言われています・・・。どうやら金平糖の科学はいまだ解明されていないようだ。

改めて金平糖をじっくりと眺めてみた。小さいころ、初めてみたときとなんら変わらぬ見事なイガだ。それにしても、見れば見るほど、奇妙なお菓子だ。

寺田寅彦 著。明治から昭和初期にかけて活躍した物理学者、随筆家、俳人である寺田寅彦の随筆作品。初出は「思想」[1927(昭和2)年]。「寺田寅彦随筆集 第二巻」[小宮豊隆編、岩波書店、1947(昭和22)年]に収録。「仰臥漫録」「夏」「涼味」「向日葵」「線香花火」「金平糖」「風呂の流し」「調律師」「芥川竜之介君」「過去帳」「猫の死」「舞踊る」の12章から成るつれづれなるままに綴られた作品。

*1:もち米を蒸して細かく砕いたもの