伊豆山の魚屋・魚久でひときわ異彩を放っていたのが、海老の「頭」だ。漆でコーティングしたかのような深紅色をしており、アルゼンチン海老よりも大きく伊勢エビより小さい。いろんな角度から観察していると、「それね、カラビネーロっていうんだよ。赤い悪魔って呼ばれてんだ」と店主が口を開く。きけばスペイン産のエビで、一本それなりのお値段で売買される高級食材だ。身のほうは刺身になってしまったんだろうか。価格は10尾分で400円。普通の海老の頭に比べれば割高にも感じるが、頭からこぼれ落ちそうなミソが決定打だった。「これでパスタつくったら、うまいよね」とつぶやくと、家人の瞳に光りが帯びた。
ミソは鶏の白レバーのようにしっかり弾力を保っており、ペロリ味見してみると大変濃厚。これは期待できる。
毎度手に入るブツでもないので、レシピとまではいかないが、つくりかたはこんな感じだ。
- 少量のオリーブオイルで海老の頭をがっつり、強火で焼く。焦げるギリギリを攻めていく。
- 白ワインをたっぷり注ぎ、アルコールを飛ばしたら、香味野菜(今回はセロリ、タマネギ、ニンニク、ローリエなど)を加える。
- 海老の頭がかぶるくらいに水を加え、弱火に落として30分くらい煮つめる。このときに蓋はしない。
- 頭をすりこぎで潰しながら煮ていき、いい頃合いでザルに引きあげて漉す。このときも殻をギッタギタに潰してエキスを搾り取る。
いわゆるアメリケーヌソースはトマトを加えるが、トマト入れてないのに赤の発色がラー油のそれだ。普通のエビとは明らかに違う、パンチの強い出汁がとれた。
ここからパスタにしていく。
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みじんのニンニク、唐辛子を炒めて香りが出たらトマトペーストと出汁を投入。(のちに分かったことだが、トマトペーストだと濃厚になりすぎるので、酸味のあるフレッシュトマトがおすすめ)。いい感じに煮詰まったら生クリームを加えて味を調え、茹でたパスタを絡めてできあがりだ。
平麺の在庫足りず、フジッリも投入。このいい加減さが家庭料理のいいところ、としておこう。
口の中に入れる前から甲殻類丸出しの濃厚さが感じ取れるが、口の中に入れると鼻腔にもエビを突っ込まれてるんじゃなかろうかというほどの存在感である。「ちょっと・・・濃ゆいな」と珍しく家人がいうものだから、追いでクリームを投入し薄めたほどである。
結局ソースが残り、冷凍をして後日またパスタを絡めたが、少量でもこの香りと味が出るという意味ではエビ至上コスパ最高の悪魔なのかもしれない。次は身のほうも食べてみたいものである。