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時速1kmの思考

禁断の果実をツマミに禁断の果実を呑む

昨日は庭掃除を経て、その足で山奥のゴミ処理場へ木端を捨てに行く。250 リットルのフゴ袋では収まりきらず、今週末また出向かねばならないが、とりあえず玄関の前は綺麗さっぱり片付いた。よくもここまで切り倒したもんだ。自分で自分を褒めてあげたい。

玄関に腰を下ろして一休みしていると、敷地内のシュロの木になにか黄色い、アダンのような実が垂れ下がってる。こんな実がなるとは知らなかった。食べられるのだろうか。どれ、ちょっと味見でもと足を踏み出してみると、足長蜂が数匹、その実に集まっていた。蜂は柿も食べるから、もしかしたら甘いのかもしれない。じきに飛んでいくだろうと観察していたが、どうにも違和感と不安に襲われる。風でゆれるシュロの葉がかさかさとこすれ合うごとく、心がざわざわする。

巣、じゃないか?
すぐさま家人を呼び寄せ、口元に指をおき沈黙を促したまま標的を指す。
「どうしよう?」って退治するしかなかろう。念のためにと買っておいたハチの巣ジェットをお披露目する時がきたのだ。
缶を横にして鉄砲のように構えて射撃するタイプだ。1000円もしたが、噴射は45秒しかもたないとある。「キャバクラよりコスパ悪いな」と緊張感に水を指す家人を背に、たしかに45秒で仕留められるのだろうか、募る不信感。とにかく一刻も早くと気がせいて、無課金状態で近づき、狙いを定め、息を止めて引き金をひく。ジェットというだけあって、キンチョールの数倍の噴射力。10秒ほどがっつりと命中させた。ミントの甘い香りが漂い、慌てて室内に退避。銀メダル級の働きはしたと思う。

翌日、蜂がいないことを確認し、へっぴり腰で巣を切り取った。鮮やかな黄色いブドウのようなフォルムは、見れば見るほど果実のようだ。だがしかし、うっかり手を出せば命取りになりかねない、禁断の果実であった。調べてみると、巣はキボシアシナガバチものだとわかった。

禁断の果実といえば、アダムとイブがうっかり口にした林檎が定説であるが、実は聖書に「林檎」とは明記されておらず、同教ではイチジクだったという説もある。一方で東欧のスラブ語圏では葡萄という説もあったり、その他バナナ、マルメロ、ザクロ、梨など、地域によって禁断の果実はさまざまだ。夜な夜な赤ワインに耽る身としては、葡萄説はかなり納得感がある。

欲望にあらがえない自分は、やや値の張る初物のイチジクにうっかり手をだしてしまった。とんがった頭から皮をむいて半分に割り、塩・胡椒を振りかける。これにギリシャヨーグルトをひと匙ずつ落とし、生ハムをふんわりかぶせてオリーブオイルをたらす。
ちょっと冷やしてからかぶりつけば、もう奈落の底に落ちてもかまやしないと思うほど、旨い。もちろん赤ワインは欠かせない。
禁断の果実をツマミに禁断の果実を呑む。ダメな人間ここに極まれり。だがこれでいいのだ。だって「にんげんだもの」。

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