
庭いじりをすると、身体を動かし土に没頭することで無となり、心身共にリフレッシュするとなにかで読んだことがあるが、自分の場合は逆のようだ。負の感情が渦巻いてしまう。
思い出したくもない過去や、人生で二度とお目にかかりたくない人などが次々と脳内に現れる。なんで今・・・・・・おのずとスコップを振りおろす手にも力がはいる。だからマメができてしまう。自分でもイヤだなぁと思う。そういった感情も土に埋めてしまえたらいいんだが。悶々としながら二十日大根、ミニ人参、イタリアンパセリ、ディルなどの種をまく。負の感情でもってまかれた種は健全に成長してくれるのだろうか。へそを曲げて出てこなけりゃいいが。
四月の熱海はオフシーズン。中国語ばかり耳にはいってきたスーパーもたいへん静かだが、棚の品揃えがいまいちだ。一人なので惣菜ですませたかったが、食べたいものが見つからない。店内を何周かしたのち、家人の嫌いな手羽先が目に入る。数を調整できるから都合がいい。
土鍋に手羽先、生姜、ネギを加えて弱火じっくり煮る。その間にYou Tubeで「孤独のグルメ」を流しながら長湯し、ビールで喉を潤す。1時間くらいたっただろうか。白舞茸と豆腐を加えて火が通れば出来上がりだ。この心身の疲れ具合からいって、「不老不死の実」の異名をもつクコの実も散らしておこう。不死には興味ないが、どうせなら死ぬ寸前まで不老でいたいとは願っている。味付けは薄い塩のみ。
まずは前菜としてのスープをすすり、胃の調子をうかがう。次に豆腐や舞茸を楽しみ、満を持してほろほろになった手羽先を箸でつまんで、塩・胡椒をちょんとつけて食べる。「そういえば、これが食べたかったんだよ」っていう味がした。
〆は秘蔵の、というか冷凍しておいたタケノコご飯にスープをぶっかけてお茶漬けにした。合わないはずがないだろう。あぁ、ラーメンでもよかったかもしれない。明日は春雨をいれようか。
行きずりの惣菜を買わなくてよかったと心から思う。