焼きそばといえばマルちゃん一択の家人。とことん食には保守的だ。
あれこれ流行のご当地焼きそばなどに手を出してはみたが、毎度あからさまに渋い顔をする。だんだんとアホらしくなってきたので、もうマルちゃんでいいや、という心境だ。
外で焼きそばを食べるチャンスといえば、祭りぐらいなものだったが、屋台の焼きそばの味は家では食べられないときめく食べ物だった。麺はソースが染みこんで黒く、ざらりと乾いていて、むちむちしたゴムのような弾力があると思いきや、箸でつかむとぼそぼそ切れる。啜ったり囓ったりして楽しむ麺料理だ。
フライ返しが鉄板に当たる音、焦げたソースの匂い、炎天下のもと神社の赤い橋の欄干に背をあずけて喰う屋台の焼きそばというのは、ウマイとかマズイなんてのを超越した、筋の通った格別さがある。
家では出せない謎の味だ。やはりあの大きな鉄板がいいんだろうか? とネットで物色していたんだが、家庭用のコンロを複数またいで鉄板を使うのは御法度ということなので、なかば諦めかけたときにフッと思い当たったのがパエリアパンだ。
我が家には訳あって2つのパエリアパンがある。ひとつは自称「GWまでもてる男」である家人が、学生時代にBBQをするために買ったものだ。古傷に塩をぬっては忍びなく深追いはしていないが、譲り受けたときはほぼ新品の状態だった。ただ34cmと大型なため、二人のときはもっぱら小さいほうのパエリアパンを使うようになり、出番が少ないいうえ非常にかさばる代物だが、捨てるに捨てられなかったのだ。
さっそく大きいパエリアパンで焼きそばを試作してみると、「おっ、屋台っぽいねぇ」と、中華鍋でつくっていたときより好感触だ。あれこれ手法を変えつつ何度かつくっているうちに「焼きそばの腕が上がったんじゃない?」ともてはやされるほどになった。やはり表面積の問題だったんだろうか。よくわからないが、旨くなったんならそれでいい。
ポイントとしては、
- 麺はチンして温める。
- 野菜はあらかじめ軽く火を通す。
- 麺はしっかり焼く。
- 粉末ソースは水でとかない。
以上だ。両手にヘラをもって豪快にあおれば、屋台の気分高まり一石二鳥だ。
マルちゃん屋台風焼きそば
材料
マルちゃんの焼きそば | 3束 | レンジで1分ほどチンして温める |
豚肉 | 150g | 一口大に切る |
モヤシ | 1袋 | 根を切って水にさらしておく |
キャベツ | 1/4個 | 一口大に切って水にさらしておく |
ニンジン | 少量 | 薄切り |
青海苔 | 好きなだけ | |
紅生姜 | 好きなだけ | 自家製紅生姜のつくりかたはこちら |
つくりかた
- パエリアパンに油を加え、固い野菜から順に、それぞれを中弱火で軽く火を通す。炒めるというより、温めるといった感じ。塩は少々。野菜に火が通りきらず、全体が油でコーティングされたら、別皿にとっておく。
- 豚肉を両面しっかり焼く。火が通ったら、パエリアパンの端に寄せておく。
- 空いた真ん中でレンチンした麺を重ならないように広げて焼く。麺を焼いているあいだに、端に寄せた肉を麺の上にのせる。
- 麺に焼き色がついたら、粉末ソースを加えて、空気を入れるようにしてよくかき混ぜる。このとき粉が肉に張り付いてダマになるが、軽く炒めた野菜をもどせば水分が滴り落ちるので問題ない。
- 野菜を一気にもどし、ほぐしてよく混ぜる。青海苔と紅生姜を散らしてできあがり。屋台的にはNGかもしれんが、目玉焼き推奨。