
熱海駅前の商店街にある、間口半間ほどの桜井農園直売所で、熱海産の酢橘を見つけた。小さなポリ袋に4~5個ほどはいって100円と格安だ。買わない選択肢などあろうか。
秋刀魚、松茸、刺身や鍋など料理を引き立たせる名脇役の酢橘だが、自分は酒に絞っては夜な夜な酩酊している。ビール、カンパリソーダはもちろんのこと、安ワインでもビターな和製サングリアのようになって飲みやすいことこのうえない。

紅白の曼珠沙華が狂い咲き、夕暮れの空は撫子色に染まる。季節はうつろっているようにも見えるが、よもや「暑さ寒さも彼岸まで」とはならぬ様子。日中はなお、ねちっこい暑さひきずる熱海だ。ここはひとつ、すだち蕎麦で一発決めておきたい。
もっとも常の蕎麦に酢橘をのせた簡素の一杯なんだが、これぞ至極の妙味なり。
酢橘の香りが移った麺つゆを、あますことなく飲み干せるほどの味付けするのが自分好みだ。出汁:醤油:みりんを12:1:1の割合で配合し、汗のかき具合をみて塩を忍ばせる。
「蕎麦屋ですだち蕎麦を頼む人の気が知れなかったけど、撤回するわ」
蕎麦屋では天ざるに丼をつけるのがお決まりの家人だ。たしかに、すだち蕎麦にはそういった絢爛豪華さは皆無だけれど、過不足なく猛暑の疲れを癒やしてくれるささやかな一杯なのだ。ようやく腹に落ちたか。
ところで、課題がひとつ残った。
すだち蕎麦の薬味はなにがいいのか?
一味、七味、胡椒、和山椒、自家製タバスコ、花椒、台湾のマーガオ。
いろいろ試してみたが、「なにもいれないのが1番だ」という至極保守的な結論に至ったままだ。宮古島で食べたすだち蕎麦はコーレーグースをかけたんだが・・・・・・酢橘がすでに、薬味的立ち位置にもあるから、これが難しい。
日記によれば、熱海は10月も暑い日がぽつぽつとある。もうしばらくはすだち蕎麦で夏の名残を楽しみたい。
すだち蕎麦

材料(2人分)
| 蕎麦 | 2束 | おびなた 生戸隠そば |
| すだち | 2個 | 天地を切って、ごく薄切り |
つくりかた
- かけ汁をやっとこ鍋に合わせて火にかけ、さっと沸かしたら、冷やす。鍋ごと水をはったボウルで冷やすのが早いが、ここのところはせっかちに保冷剤を浮かせている。
- 蕎麦を湯がいて、流水でよく洗い、氷で締める。konpeito.hatenablog.jp
- 蕎麦をゆがく間に、すだちを切っておく。
- 蕎麦に冷えたつゆを張り、酢橘を散らす。
