熱海の売りのひとつは昭和レトロである。
昭和に生まれ、平成、令和と過ごしてきたいわゆる氷河期世代の自分にとって、熱海のレトロ具合は自分の過ごした昭和よりもだいぶさかのぼっているので、ノスタルジーを十分に享受できているわけではないかもしれないが、細胞レベルでとても落ち着く、いい雰囲気だと思っている。
ポップなオリジナル書体の看板。
アーチを描いた古い窓。
贅沢に施された色とりどりのタイル。
ショーケースにずらり並んだ精巧な食品サンプル。
プリンアラモード、メロンソーダ、ナポリタン、エビフライ、ピラフ、オムライス。
華々しい昭和の洋食が、熱海という街をいぶし銀に輝かせている。
ハンバーグも王道だろう。デミグラスソースのかかった洒落た洋食屋のハンバーグが極上なら、母のつくるソースケチャップ味は猛烈な懐かしさ込みで最上といえる。
昨今はハンバーグの起源とされるキョフテにかぶれていたが、やはりここは熱海。昭和どっぷりのハンバーグをつくっていきたい。
ハンバーグの起源についてはwikiに譲るとして、日本における家庭のハンバーグの最大の特徴は、つなぎを加えて軟らかくジューシーに仕上げる点だろう。
moggy流のポイントはふたつ。
- つなぎに牛乳で湿らせた車麩をつかう。
- 肉に氷をいれる。
精進料理でおなじみのお麩は、古くは肉の代用品としてその豊富なタンパク質で日本人を支えてきた。つまり肉に肉を混入させているようなものだ。さらにはパン粉よりも日持ちがするうえ、吸水率も高い点も見逃せない。
氷を加えるのは、肉の脂を流出させないよう冷たい状態にしておきたいのが一つ。
もう一つは、焼くと抜けてしまう水分をあらかじめ補っておきたいからだ。これは以前紹介したハンバーガーのパテと同じ原理である。
konpeito.hatenablog.jp
祖母の形見の鉄板にハンバーグをのせればノスタルジック全開のハンバーグだ。
切った時にあふれ出る肉汁の高揚感をお約束したい。
ノスタルジックなハンバーグ
材料
合い挽き肉 | 300g | |
氷 | 5個 | 1つ9gでした |
塩 | 3g | 肉の1% |
ニンニク | 1/2個 | すりおろす |
ナツメグ | 少々 | すりおろす |
胡椒 | 少々 | |
卵 | 1個 | |
タマネギ | 1/4個 | 粗みじんにして、オリーブオイル少々かけてレンジで3分チン、冷やしておく |
車麩 | 1個(7g) | 包丁で細かくして、牛乳30ccほどに浸しておく |
つくりかた
- タマネギと車麩を下ごしらえする。
- 合い挽き肉に氷、塩、ニンニク、ナツメグを加えて、すりこぎで叩くようにして練る。氷が溶けるころには、全体がまとまってきている。
- 牛乳でふやかした車麩と卵を加えて練る。
- 冷蔵庫で30分ほど寝かせる。けっこうゆるいタネだが、冷やすことでしまって扱いやすくなる。
- 手を水で濡らして、小判型に整形。真ん中はへこませなくてもいい。
- フライパンを中弱火で熱し、ハンバーグを焼く。両面に焼き色をつけたら、パイ皿にのせておく。
- 200度に余熱したオーブンで10分。その間に、付け合わせなどを準備する。
- 鉄板をあたためておき、ハンバーグと付け合わせを盛り、ソースをかける。
ハンバーグの魅力のひとつは、ソースで味に変化をつけられるところだろう。それにしても最近の市販のハンバーグソースはよくできている。家庭でデミグラスを仕込むのは費用対効果が悪いから、ここは市販のものを使ったほうが賢明と思える。
だが家人はいまだ「ソースとケチャップのやつ」が好みだそうだ。きっと舌もまだ子どもなんだろう。
ここにバルサミコソースを加えると、艶っぽい雰囲気が出る。バルサミコとエシャロットを煮詰め、濃口醤油を加えたソースなんだが、肉との相性がいい。
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自家製バルサミコソース | 30g | |
ケチャップ | 14g | |
中濃ソース | 6g | |
無塩バター | 10g |
バルサミコソース、ケチャップ、中濃ソースを加えてあたため、オーブンでハンバーグを焼いたあとの肉汁を加える。最後にバターでとろみがでれば完成だ。