昨年の暮れは友人を訪ねてタイに行ったので、年明け恒例のグアムはやめておくことにした。もちろん行きたくてうずうずしているが、猫のうらめしそうな目を見ているとそうも言っていられず。せめてものお慰み、ハンバーガーでも食べてグアム気分を味わうことにしよう。
ハンバーガーの構成要素はたった二つ、バンズ(パン)とパティである。おにぎりに負けないシンプル食材であるがゆえに、材料の質がものをいう。すべてホームメイドにこだわりたいところだが、バンズは本職に任せたほうがうまいものが出来るので、今回はパティに全力を注ぎたい。
ところで、欧米では牛肉100%のパティが主流なためか、昨今は日本でも「ビーフ100%!」を唱っている店が多くなってきた。
トップシェフであるヘストン・ブルーメンソールが推奨しているのは牛の肩肉(chuck)・ともバラ(short-rib)・肩バラ肉(brisket)を1:2:2で配合するパティである。ハンバーガー店でも開くなら盛大にやってみたいが、二人と猫一匹暮らしでこれをやるのはどうも費用対効果が悪い。
なので、私は近所で手に入る、良質の国産牛と豚の合い挽き(50%/50%)使うことが多い。「そんなのハンバーガーじゃない!」と言われてしまいそうだが、それでうまいんだからいいじゃないか、というのが結論だ。なにより手近で新鮮なものを使って何度も作ったほうが、自分の目指す味になってくる。
ジューシーなパティをつくるごく簡単なポイント
これまで、パティのつなぎ(パン粉や玉子)にこだわってみたり、肉の練りかたや成形など、試行錯誤をくり返してきたなか、ある日ふと思った。「もっとシンプルにつくればいいんじゃないの?」。なんだか色んな意味でこねくり回しているような気がして、目指す方向を見失ってしまったのだ。
そこで原点に立ち戻ることにした。材料は合い挽き肉、塩、スパイス+α。つなぎは入れない。「ハンバーグ」と「ハンバーガーのパティ」は違うのだ、と割り切る。
この条件のもと、肉らしい弾力のある食感を残しつつも適度に歯切れ良く、ジューシーにするにはどうしたらいいのか、という方向性に切り替えたのだ。現時点で効果的だったメソッドは次の3点である。
① 冷水を入れる
肉は加熱することで肉自体の水分が蒸発し、水分が抜けてぱさついてしまう。これは避けようのない事象なので、あらかじめ水分を補ってやることで、多少の水分が流出したところでジューシーさを保つことができる。
② すりこぎで練る
パティを手でこねることの弊害は二つある。一つは、手の熱が肉に伝わって、脂が溶けだしてしまうこと。脂が溶け出るほど、肉がぱさつくことになる。
そしてもう一つは、肉を練りすぎてしまうことだ。挽肉のレシピではよく「肉が粘るまでよく練る」と見かけるので、思わず力を込めてけっこうな時間練っていくわけだが、どうやらある一定以上練りすぎると、焼いたときにぱさついてしまうのだ。ただその見きわめがかなり難しい。
そこで、すりこぎで叩くようにして練ってみたところ、手の熱が伝わることもなく、肉の線維が必要以上に押しつぶされて締まることがなく、パティがまとまっていくのだ。結果焼いたときにはちょうどいい加減になったのだ。
③ 大きく薄く成形する
水分と脂の流出を最小限にとどめるには、火入れをなるべく短時間にしたほうがいい。100〜120gの肉をバンズの大きさよりも一回り大きく、厚さは1.5cmくらいに成形すれば、香ばしい焦げ目をつけつつも全体をさっと焼くことができる。もっと肉を食べたければ、ダブルパティにすればいいだけのことだ。
パティをジューシーにするもっと簡単な裏技
グアムのモサズ・ジョイントで頼んだ「ほうれん草、マッシュルーム、ブルーチーズのハンバーガー」は、トッピングとしてほうれん草とマッシュルームとブルーチーズが入っているわけではない。パティにそのすべてが混ぜ込んであるのだ。キノコはそれ自体のほとんどが水分なので、肉にかじりついたときにじゅわっとキノコの汁がにじみ出てくるわけだ。さらに風味も食べ応えも増すといういいことづくめ。
ちなみに、キノコは水分が飛ばないように弱火で炒め、粗熱をとってからパティに入れるとジューシーさを保てる。
ジューシーなパティのつくりかた
ひとつはダブルチーズバーガーに、もうひとつは一段のチーズバーガーにしたかったので、中途半端な3枚となった。
材料(3枚分)
合い挽き肉 | 240g | 牛・豚の50%。粗挽き推奨 |
塩 | 2g | 肉の0.8%が目安 |
胡椒 | 適量 | |
冷水 | 36cc | 肉の1.5%くらいが目安 |
ニンニク | 小さめ1片 | すり下ろす |
エシャロット(option) | 1個 | みじん切り |
スパイス | 適量 | ナツメグ、ローズマリー、タイムなど好みで |
牛脂(option) | 1個 |
つくりかた
- 冷やしておいた合い挽き肉に、冷水、塩・胡椒を入れて、すりこぎでおすようにして練る。冷水を入れると肉はシャバシャバと緩くなるが、冷蔵庫で休ませればまとまってくれる。
- ニンニクとエシャロット、好みのスパイスを入れたら、さらにすりこぎで混ぜる。全体が混ざったら、ラップをして30分以上休ませる。
- 100〜120gくらいにタネを分けて、成形する。手を水で濡らしてやると手離れがいい。まず団子状に丸めて、両手でたたきつけるようにして空気を抜き、丸く平たく伸ばしていく。焼くと肉が縮むので、バンズより一回り大きめを目指す。
- バットにパティを並べる。なるべく縁が割れないよう、なでるようにして形を整え(ここでも手を濡らしておくと手離れがいい)、ラップをして焼くまで冷蔵庫で休ませる。
- グリルパンを熱して、パティの表から中火で焼く。スーパーで牛脂がおいてあったらもらっておこう。肉の風味がパワーアップする。
- こんがりと焼けたらひっくり返し、弱火にして裏面を焼く。だんだんと血がにじんできたら、もう一度ひっくり返して出来上がり。チーズをのせる場合はここでのせて、しばらく蓋をしておく。
- 温めておいたバンズに挟む。こちらは東新宿の峰屋のバンズ。
世の中にはこんな便利なツールもあるんだねぇ。
そして物欲は果てしなく、次買うならこのグリルパンだなぁ。一度に何枚もパテ焼けそうだし、キューバサンドも出来るしと優れもの。ただそうやすやすと壊れるグリルパンではないから、しばらくは我慢だ。
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