mogu mogu MOGGY

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時速1kmの思考

鰯の肝を喰う

8月6日、熱海。
朝から雨と晴れが拮抗している。夕方になると、水面のあちらこちらがふんわり浮いていた。雲の影響だと思うが、淡くてとてもいい。

2ヶ月ぶりに伊豆山の魚屋、魚久へ。五月から店舗のリニューアルをしていたうえに、我が家も車がない時期が重なり、しばらくご無沙汰をしてしまった。念願のジムニーで魚久へ急ぐ。

店内をじっとり観察し、しばし悩む。
「決まった?」と店主に声かけられるもの、今晩の献立の方針が見えない旨つたえると、じゃあゆっくり悩んでと。

さまざまな切り落としが混入している親父刺身セット300円は買い。塩鮭は明後日くらいに必要。明太子はオクラと和えよう。メインはイワシにしよう。一尾130円。

イワシどーすんの?」
「塩焼きかなぁ」
「このイワシ、肝もいけるから、あんまりごちゃごちゃしないほうがいいよ。腹に脂もってる。変なもの食ってないから肝がうまいよ。大根おろしとポン酢だな」
「つまりサンマみたいに食うってこと?」
「そうそう。しっかり焼いてね」

連れ帰ったイワシの腹はパンパンだ。「イワシは鱗が光ってるのを買え」と言われていたが、これはもう落ちているのか、取り除いたのか不明だが、尾を持つとピンと直立するので、やはり新鮮なのだろう。手の匂いを嗅いでも、ぼぼ無臭。奇跡のイワシと言わざるをえない。

ざっと洗って水気をしっかり拭き取り、粗塩をがっつりまぶして、尾はアルミホイルで包み、おなじみ「Kan焼き上手」にのせる。
脂が滴りおち、煙はもうもう立ちあがる。コンロの掃除を考えると陰鬱だが、そんなことより煙が旨い。近所の猫たちがざわついているだろう。

本日の献立。
ゴーヤの梅和え。丸オクラの明太子和え。おつまみ切り落とし刺身。鶏むねと胡瓜・胡麻ソース、焼いたイワシ


イワシの腹は、もはや肉である。
そして肝がうまい。臭みは1ミリもなし。苦味を超越した旨味とはこういうことか。塩辛の肝なみに飯にぶっかけてかっこみたい衝動にかられる。

イワシの肝は珍味中の珍味。最高中の最高に認定。
夢中で食べおえてしまった。
名残惜しく、口のまわりについた脂の旨味を舐めている。
清々しいまでにコンロは汚れてしまったが、悔いはない。

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kan 焼上手 両手

サイズ:29.5×20×2.5cm/本体重量:480g