八月の熱海は花火三昧だ。多賀、伊豆山、網代など近隣で催される花火大会も含めると、週2ペースでぶち上がっている。いくらなんでもやりすぎなんじゃないかと心配になるほどだ。
そのうち飽きるだろうとタカをくくっていたが、そこは熱海市も手練れだ。毎回趣向を変えてきており、プロ根性丸出しで挑んでくる。花火師たちのどや顔が目に浮かぶ。FM湯河原熱海の実況中継を流しながら鑑賞すると乙だ。ローカルならではのCMや、独特な抑揚のアナウンスが都会にはない情緒をぐっと盛り上げてくれる。
先日も熱海は花火大会。ゆえに魚久も大繁盛なんだろう。そこかしこに予約済みの刺し盛りが積んである。なかには伊勢エビがのった豪奢な皿も目視。別荘族であろうマダムたちの怒濤の注文は清々しいのひと言に尽きる。
我々はその端っこをたっぷりいただいて、海鮮丼に内定だ。
豪華な刺し盛りが出る日は、切り落としも豪華なはずだ。鯵、鯛、マグロ、ブリ、不明な魚類とバラエティに富んでいる。差し色のサーモン(マスか?)はうっかり混入したのだろうか。そこも含めて好感のもてる親父つまみセットなのだ。
家に着くなりあわただしく飯を炊く。
酢飯
すし酢は生合わせ(つまり、火をいれない)。すべての調味料をよく溶かすこと。できれば前日からつくっておいたほうが馴染んでいる。
米 | 2合 | 長谷園のかまどさん使用。水360cc(2合)で固めに炊く |
すし酢 | ||
穀物酢 | 180g | |
砂糖 | 90g | |
塩 | 45g | |
昆布 | ひとかけら |
炊いた米1合につき、すし酢は大さじ2杯。
蒸らした米が熱いうちに、しゃもじでバウンドさせたすし酢をふりかけ、うちわで扇ぎながら、しゃもじを切るようにして混ぜる。
熱海では海鮮丼を売りにしている店も多い。塗りの桶に盛られた正統派、宝石箱のような丼、かき氷のようなビジュアルだったりと、それぞれ存分に個性を押し出している。
若者にはかき氷系が受けている気がするが、どうやら若さから遠のいた自分にとってはあの押し寄せるビジュアルが少々もたれる。
親父つまみセットのバリエーションをどう活かそうか。欲を言えば、自分の好きな魚だけをのっけたい。これが外で海鮮丼を食べない理由かもしれない。となると、酢飯を椀によそい、各々でmy丼をつくるのが合理的ではないか。そうして、我々の海鮮丼はフリースタイルとなったのだ。
家人の祖母がつくった抹茶椀に酢飯をよそい、好みの魚をのっけていく。彩りと味のハーモニーをどう組み合わせるか、腕のみせどころだ。どの切り身もまんべんなく、いとおしく思えてくる。
酢飯の塩梅がハマった。
2合の酢飯がほぼ消滅。ちょっと怖い。うますぎた。
豆腐とネギの味噌汁をそえたら、すべてが完璧な夜となった。