店頭では異彩を放っていたんだが、連れ帰ったらややキモいなという印象だったハナサキガニ。GW中に花咲蟹飯と洒落こもうという目論みだった。ハナサキガニの概要を所々からかいつまむとこうある。
・旬は夏(7~9月)。
・かつて花咲半島と呼ばれていた根室半島で水揚げされたことが名前の由来。
・生息域が狭いことと漁獲量が制限されていることから「幻のカニ」とされる。
・タラバガニ科に分類される。
・名前に「カニ」とあるが、ヤドカリの仲間に分類される。
最後の一文は想定外だった。
カニ飯がヤドカリ飯になってしまうではないか。
「聞いてないよ~」という声が脳内にこだまする。
出鼻をくじかれた感が否めなかったが、しぶしぶ湯を沸かし、3%の塩を加えてハナサキガニを放り込む。黒ずんだ装甲が秒で鮮やかな朱色に染まり、戦国の機運高まる。赤備えは圧倒的に強いのだ。
死んでもなお、食われてなるものかというオーラを全身から放っている。さすが精鋭と呼ばれる赤備え、攻撃の手を緩めることはない。なんせ脚の関節をひねるにもトゲが指に刺さり、かなり厄介な御仁と言わざるをえない。
GWは天気が崩れるという予報だったが、奇しくも前半は快晴続きだった。こんなことをしている場合か?と疑念がちらほら頭をかすめるが、もろもろ手遅れだろう。
疑念を払拭できないまま身をほじくり出したのち、殻はまた酒とともに煮込んでエキスを絞りとる。相模湾を目の前にオホーツク海を胸一杯に吸い込んだ。
冷ましたゆで汁、蟹のエキスをザルで漉し、日本酒と薄口醤油で濃い吸い物くらいの味付けになおす。
米2合に、出汁と羅臼昆布をひとかけら落とし、土鍋で炊く。北海道同志で相性はいいだろう。
炊きあがり落ち着いたところでカニの身を散らし、バターをひとかけら忍ばせ、その上に甲羅をのせて蒸らす。そういえばバターも道産だ。こうなると土鍋のなかは北海道物産展状態である。
友人が来熱した子どもの日。さんざ食って飲んだあとの〆に花咲蟹飯を披露した。
思わずあがる歓声は、やはりカニならではの底力なんだろう。ズワイガニと比べてややクセが強い印象だったが、バターという好敵手が現れ、せめぎ合ったのち互いのクロスカウンターがヒット、同時に昇天していった、そんな光景が浮かぶ味だった。
ハナサキガニがヤドカリの仲間だということは、友人には秘密にしておいた。
北海道ではハナサキガニを使った鉄砲汁という郷土料理がある。まぁ、カニの味噌汁なわけだが、次回は殻出汁でこちらをつくってみたい。
3年前のGWもカニをほじくっていたことが判明。いまだに連休をうまく使いこなせていないようだ。
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