日本人的シナモンロール文化
シナモンロールといえば、一時期、日本でも人気を博したシナボン(Cinabon)を思い出す。2000年当時は飛ぶ鳥を落とす勢いで次々に東京に進出していた。初めて食べたシナボンは、たしか自由が丘店だった。あの長蛇の列に堪えられたのは、まだ若かったからとしかいいようがない。
ようやく口に入れたシナボンは、見事なまでにアメリカンな甘い・でかい・くどいの三拍子。こめかみがキーンとしたことを覚えている。あれは甘すぎた。しばらくブームは続いていたが、その後一度も買うことはなく、時は過ぎていった。
それからみるみるうちに街から消えていくシナボン。日本人にとっては毎日摂取できる糖分量をはるかに超えていたのだろう。2009年には日本市場を撤退。だが、日本人のシナモンロール熱はマグマのように地底でくすぶっていた。
改めて日本でシナモンロールが注目を浴びたのは、2006年に公開された映画「かもめ食堂」に出てきたシナモンロールだ。飯島奈美氏がプロデュースしたシナモンロールは、表面にシナモンを巻いた筒状の生地を適当にカットし、指でつぶす素朴な形。その小ぶりで素朴なシナモンロールは、北欧ブームにのって、日本人女性の心をわしづかみにする。そして、あれよあれよという間に「かもめ食堂風シナモンロール」と題したレシピが、ウェブサイトに溢れ出したのだ。
「これがシナモンロールじゃ。うまいやろ!」という外国からの押しつけられたそれをはねのけて、独自の追求がなされはじめたのだ。これは日本人のお家芸ともいえる。日本人がシナモンロールに目覚めてしまった瞬間だろう。
かくいう私も、飯島氏のレシピを参考に、シナモンロールをつくってみたことがある。パン職人でもないのでえらそうなことは言えないが、生地自体が甘くふわふわの、ケーキのようなシナボンに対して、飯島氏のものはしっかりと噛み応えがあり、甘さは控え目の朝食用。ここに明確な棲み分けがあったのだ。
シナモンロール恐るべし。
2012年にはシナボンが六本木店を皮切りに再上陸を果たしているので、日本のシナモンロール文化に与えるその相乗効果は計り知れない。
シナモンロール+コーヒー=スマイル
グアムにも、GPOとマイクロネシアモールにシナボンがある。モールにはいると香ってくるシナモンは食欲をそそる。
それを押さえてローカルに人気があるというカップ&ソーサ(Cup & Saucer)のシナモンロール($2.25)。トランスファットフリーなのも人気の理由のひとつなのだろうか。明るい店内のショーケースに並ぶスイーツに目移りしつつ、ここは初志貫徹だ。
見た目は非常に地味だ。そのまま食べてみると、飯島氏のシナモンロールに近い。生地はしっかりしていて、甘さは控え目だ。むしろ、もう少し甘くてもいい気がする。
次に、付属のクリームチーズフロストたっぷりと塗って食べてみる。
甘い〜〜〜〜。
某芸人のようなリアクションで大変申し訳ない。適当な言葉がみつからないのだが、つまり、ブレッドからケーキへと変貌してしまったのである。
不甲斐ないことに、クリームチーズをすべて食べ切ることはできなかった。きっと全量を使い切ってシナボンに並ぶ甘さを実現するのだろう。ただなにがありがたいって、好みで甘さを調節できることだ。
やはり、コーヒーが合う。目の前はコバルトの海。
シナモンロール+コーヒー=スマイル。この公式は盤石だ。
Information
Cup & Saucer
場 所:Calvo Building, Hagatna, Guam 96910
営業時間:月〜土曜日 6:30〜18:00
日曜日 7:30〜13:30
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