
五月も庭掃除に明け暮れていた。移住してから三年目を迎えるが、ようやく本腰を入れて庭の整理にとりかかったのが四月。おそらく前の住人も、庭の手入れには一切興味がなかったと思われる。雑草は自由闊達に蔓延り、枯れ葉は堆肥となって、土が軒下まで波のごとく迫っている。そろそろ家がのみ込まれるんじゃないかという危機的荒れ具合だ。
植物を引っこ抜き、根を壊し、枯れ葉を捨て、木を切り倒す。これが永遠に続くのかと思うと、どん底まで気が滅入ったが、とにかく梅雨に入るまでになんとかせねばと、ヘルニアで痺れる腰に鞭打って慣れない役務に従事した。
五月の課題は、ススキの抜根だった。シャベルを振り下ろし、庭から出土した謎の鉄パイプをバールの代用として土を掘り、根を抜く。ときどき熱湯をかけ、根を弱らせたりもする知恵もついた。「除草剤を使えばいいのに」という声がちらほら聞こえてくるが、どうも踏ん切りがつかない。雨降りでない日はこれが毎日だ。自分は農家になれないなと、つくづく思った。
「野良仕事のあとは和食をとる気分にならない」というようなことを、玉村豊男氏は綴っていたが、今では心から賛同するばかりだ。あっさりさっぱりの和食では、もはや体力が回復しないのだ。
ぼろ雑巾のようにくたびれた身体には、焼き肉が最上だ。ブランドを冠したやまと豚のハツが最近の気に入りだ。臭みもなく、歯ごたえよし、高タンパク低カロリー、そして米よりもワインが合う。臓物類をさほど好まない家人の目を盗み密かに買い求め、一人焼肉で打ち上げるのが、庭仕事のあとの恒例となっていた。
「今日はハツを食べるぞ」とほくほく意気込んでいたある日のことだ。出社するはずの家人が仕事部屋に籠もっているではないか。予定が変わったのは仕方ないが、はて困った。ハツの賞味期限が切れてしまう。
ホルモン焼きをはじめとする臓物系の焼肉は、家人にとって「焼肉」と認定されない。庭仕事で脳に酸素が回っていない状態でつくったのが、豚ハツの豆板醤炒めだった。ハツの新鮮さも手伝ってか、想像以上に家人の箸がすすんでいる。「適当につくったときほど旨いよな」と余計な一言がついてきたが、旨かったならそれでいい。今後は堂々と豚ハツを買い込むことができる。
コツとしては2つ。
・ハツの下味は、手でしっかりと揉み込む。
・ハツがさっぱりしているので、炒め油は多めのほうがバランスがとれる。
豚ハツと葉ネギの豆板醤炒め

豚ハツとピーマンの豆板醤炒め

材料
| 豚ハツ | 170g | 薄切り |
| ピーマン | 4個 | ハツに合わせて切り揃える |
| ニンニク | 1片 | みじん切り |
| 下味調味料 | 醤油・豆板醤小さじ1/2、塩ひとつまみ、胡椒少々、片栗粉小さじ1 | |
| 合わせ調味料 | 紹興酒・醤油大さじ1、胡麻油小さじ1 |
つくりかた
- ハツは氷水で洗い、血の塊などを取り除き、水気をとったら薄切りにする。
- 下味調味料をハツに揉み込む。使うまで冷蔵しておく。
- 油をならした中華鍋に大さじ1ほど油をいれ、ピーマンを軽く炒め、別皿にとっておく。
- 大さじ3の油を中華鍋にいれ、強火でハツを炒める。全体が白っぽくなったら、ニンニクも加えて炒める。
- ピーマンをもどし、合わせ調味料を絡ませたら出来上がり。

同じ調味料でゴーヤも炒めてみたみたが、ありですな。


