
災害級の猛暑といわれる7月を乗り越え、すっかり残暑気分の8月上旬だ。
去年切り倒した木と葉の山は、土に戻ろうとしている。「放っておけばそのうち腐って捨てやすくなるよ」という木材業者の助言を信じて玄関先に放置していたが、木っ端をどけてみると腐葉土には米粒大のおびただしい数の黒い甲虫が潜んでいた。背筋が凍った刹那に「これは、まずい」。意を決して、掃除にとりかかることにした。
厚手のジーパンをはき、腰に蚊取り線香をつり下げ、手ぬぐいを首にまき、チェーンソー片手に作業にあたる。炎天下のなかもくもくと枝を折るという地味な作業は、都会育ちの四十路にとってはかなりキツいものだった。一日せいぜい数時間が限度だ。朦朧としながら庭先に座り込み、水筒から冷えた麦茶を一気に流し込む。熱海での優雅な生活はいったいどこへいったのか。
作業工程としてはこうだ。
まずは枝から葉だけを落とし、45リットルのゴミ袋に詰めていき、捨てる。残った枝は50cm以内に切り刻んでいくが、ゴミ袋では立ちゆかない物量だ。枝を捨てるための何かを求め、ホームセンターに駆け込む。まさしく用途にぴったりの頑丈な袋を見つけたときは嬉しくなった。専門用語で「フゴ袋」というらしい。これなら枝が袋を突き破ることもないし、250リットルの大容量だ。結局、市の環境センターに2回持ち込んだので、500リットルの枝を捨てたことになる。
こんな生活を続けていたせいだろうか。判断力が衰えたのか、野菜室にはなぜかネギばかりが大量にある。きっと「ネギを、食べよ」というお告げなのだろう。披露回復を願って牛肉とジャッジャッと炒める。これを麦飯にバウンドさせてわしわし食べて、温泉につかり、即刻布団に落ちれば、よき明日が迎えられるに違いない。
