一駅歩いて隣町のスーパーまで見廻ったところ、カゴに飛び込んできたのは山口県産のトビウオ、一尾130円という破格であった。備忘録によれば毎年この時期はトビウオを買っており、芸もなく毎度刺身にしているようだ。
トビウオというと関東ではあまりメジャーでない魚だが、トビウオからとれる「アゴ出汁」となれば、鰹節・昆布につぐ全国トップクラスの和食材に躍り出る。
以前手伝っていた店は九州全般の料理を提供しており、〆の五島うどんにはアゴ出汁を使っていた。黄金色の澄み切っためんつゆを、ほとんどの客はポカリスェットのようにゴクゴクと飲み干していた。おそらく、トビウオの何かしらの成分が、飲酒によって失われた水分を効率的に補っているに違いないと睨んでいる。
ある日、店主に「出汁のとりかたを見せてほしい」と願い出てみると、大きな寸胴鍋にパックの出汁を慣れた手つきで入れはじめた。なんだか開けてはいけないふすま越しの鶴を覗いてしまったようで面食らったが、あれも懐かしい夏の思い出である。
迫り来る盛夏、そろそろ旅にでもでかけたいと飛行機のチケットを物色していたところ、東京では連日コロナ感染者が200人を超え、出鼻を挫かれた感は拭えない。
波間を飛び回るトビウオのように海ではしゃぎたい気持ちをぐっと堪えて、トビウオ団子うどんで夏の気分を盛り上げていこうと思う。
トビウオ団子うどん
材料
トビウオ | 2尾 | |
味噌 | 小さじ2 | |
塩 | 少々 | |
酒 | 少々 | |
生姜汁 | 少々 | |
片栗粉 | 小さじ1 | |
うどん | 2玉 | カトキチの冷凍うどんを使用 |
昆布 | 1枚 | |
薄口醤油 | 少々 | |
ネギ | 好きなだけ |
つくりかた
トビウオを三枚おろしにして、皮もひく。やりかたはアジとかわりない。
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身を包丁でねっとりするまで叩く。
すり身に味噌、塩、酒を加えて味付けし、片栗粉でまとめる。
エラをとった頭、骨をこんがり焼く。
1Lの水で昆布をふやかし、頭と骨を加えて弱火でゆっくり加熱する。昆布は沸騰する前に取り出しておく。
出汁を漉す。
出汁を薄口醤油で味付けし、すり身を団子状にして温める。そのあいだに、うどんも湯がいておく。
温めておいた器にうどんを盛り、めんつゆをたっぷり注いで団子をのせて、ネギを散らす。
大きなほうのトビウオは卵をもっていたので、夕飯は吸い物にした。