緊急事態宣言を受けて、心身に変化が表れている人が少なくない。
たとえばMさん。朗らかで、誠実で、マグロのように昼夜動き回るような快活な女性だが、ストレスからくる帯状疱疹を発症してしまったそうだ。
思わず声をかけたが、「私はそんな繊細なタイプじゃないのに」と前置きしながらも、「毎日ニュースで不安材料並んでしまうと、どこか無理してるのかもしれないよね。落ち着いたら飲みに行こう!」と前向きなメールに安堵した。
まぁ、人のことを心配している場合でもない。身に覚えになくはなく、私は突然涙が止まらない、まさに「号泣する」症状があった。コロナ関連のニュースを昼夜浴びつづけ、志村けんの訃報で何かがパチンとはじけてしまった、というのがヤブ医者家人の見立てである。
そんな家人いわく、ストレスには赤身肉が効くらしい。
たしかに、最近なぜかポークソテーにはまっている。
しかも、これまで好んでいたロースじゃなくて、最近は肩肉でないと気が済まない。より赤く、肉肉しく、食べ応えも脂もガッツリ。
『マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-』によれば、肉の色は鉄分の濃度と関係してくるという。
赤い牛肉とラム肉は、色の薄い豚肉に比べて平均2〜3倍の鉄を含む。比較的色の濃い豚肩肉に含まれる鉄分は豚ロース肉の2倍ほどになる。
一般的に、鉄分が不足すると心身にさまざまな症状を及ぼす。倦怠感や爪の異常、免疫力の低下といった身体への影響がでたり、心への影響がでる場合もあるという。イライラや集中力低下、さらにはうつ状態との関係も指摘されているのだ。
気づかないうちに、ロースよりも肩肉を心が求めていたのかもしれないと納得する。
いま気に入っているのは、西五反田にある豚肉専門店、岸商店の肩ロース、100g180円だ。厚み1センチくらいで頼むと、「筋切りしとくよ〜」とおじいちゃんが黄色い機械を肉に差し込んでくれる。そのせいなのか、ここの肉は肩肉らしからぬ柔らかさで、脂が甘くてジューシー。そして、100g230円のロース肉よりも安い。
これまでは包丁で筋切りをしていたけれど、簡単にやわらかく仕上げるには、効率的な筋切りが欠かせないのだな、と学んだ。調べてみると、彫刻刀をつくるメーカーで、刃が「X」型に配列した進化番のミートソフター niXaX (ニクサス)という商品もある。ネーミングにぐっとくる。
在宅勤務が続投中のいま、ポークソテーは重宝している。
調理が簡単だし、早いし、うまいし、安いし、ソースでバリエーションもつけやすい。
今日紹介するのは、ワサビをガツンと効かせた赤ワインソースのポークソテーだ。
ポークソテー【赤ワインソースにワサビを添えて】
材料
豚肩ロース | 2枚 | 厚み1cmくらい |
ワサビ | たっぷり | |
ソース | ||
赤ワイン | 大さじ2 | 安いもので十分 |
みりん | 大さじ2 | |
濃口醤油 | 大さじ1 | |
胡椒 | 少々 | |
バター | ひとかけら |
つくりかた
- 肩ロースに、塩少々で下味をつけ、10分くらいおく。
- フライパンで肉を焼く。最初は強火で両面やいたら弱火に落とし、ゆっくりと七分通り火を入れる。
- 肉を一度取り出し、休ませるうちにソースと付け合わせをつくる。今回は別のフライパンで春菊を焼いた。味付けは塩のみ。
- 肉を焼いたフライパンに赤ワインとみりんを加えてアルコールを飛ばしたら、濃口醤油、胡椒を加え、バターでとろみをつける。しっかり煮詰めることで、艶がでる。
- フライパンに肉を戻し、弱火で温めながらソースを絡める。
- 温めておいた皿に肉と野菜を盛り、ソースをかけたらワサビをたっぷり添える。練った粉ワサビがパンチがあってオススメだ。肉にべったりと塗りつけて食べてほしい。