魚屋をパトロールしていて一番嬉しい瞬間は、得体の知れない未知の魚に出会ったときだろう。これまでもギンポ(銀宝)やヨロイイタチウオ(鎧鼬魚)といった珍魚を紹介してきたが、本日のおすすめは「柳の舞(ヤナギノマイ)北海道産」である。
艶っぽい名前がついているが、運動不足の中年のように垂れ下がった胴回り、出目金のような顔立ちで、なんだか絶妙に不味そうだな、という第1印象だ。時は夕暮れ。店頭には2尾、行き遅れたオーラを発しているが、250円という破格ぶりが脳内の珍魚センサーを刺激してくる。
調べてみると、北海道ではメジャーな魚で、メバルの仲間というのが定説だが、水産林務部森林海洋環境局成長産業課によれば「フサカサゴ科」とある。カサゴといえば高級魚なんだが、こいつは巷で外道呼ばわりされている魚だということもわかり、ますますその外道っぷりが気になる。ここはがっぷり四つで対峙したい。
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まずは鱗をとるが、ぬらぬらとした粘液をまとう皮膚、下腹はゆるふわで、尻から黄色い謎の液体が漏れ出す始末で、なんとも気持ちが悪い・・・・・・所詮外道なんだろうか。エラはきれいな赤色をしているので鮮度は悪くなさそうだ。指をひっかけて引っ張ると、ずるずると内臓は抜けた。
腹を割いてみると、黄色い卵がでてきた。そうか、産卵期だったのか。なんだか申し訳ないような気持ちになり、丁重に卵を外す。血合いの周りは黒い粘膜で覆われていたが、指でこすってやるときれいな白身が現れた。
貝が手に入ればアクアパッツァにしたかったが、カード揃わず。手持ちの香味野菜とともに蒸して清蒸鮮魚にした。魚のポテンシャルを測るには結果オーライな選択だったと思う。
蒸すとフワッとした白身の柔らかさで、骨も太く身離れよし。良くも悪くもまったく癖がない。煮付けや唐揚げ、バター焼なんかにも向きそうだ。というか、この外道、普通に旨いじゃないか。特に顔の周りのちょっと締まった部分なんてイケている。
その後、外道という言葉には複数意味があり、釣り人界隈では「狙った魚じゃない魚」「釣れても嬉しくない魚」を外道と呼ぶということを知った。
うっかり釣られてしまったヤナギノマイだって不本意だったことだろう。外道には外道の生き方があるってもんだ。しかもこの女史は立派な外道であった。
ヤナギノマイの清蒸
材料
ヤナギノマイ(柳の舞) | 1尾 | |
ネギ(青いところ・もしくは芯) | 数本 | |
生姜 | 薄切り3枚 | |
タレ | 出汁と醤油を2:1くらいで合わせ、甘みは好みで | |
●濃口・薄口醤油 | 各大さじ1 | ※好みで魚醬を加えても |
●砂糖 | 小さじ1/2 | |
●鶏がらスープ | 大さじ4 | ※生臭みがなければと蒸した魚からでた出汁も加えるのもあり |
トッピング | ||
ネギ(白いところ) | 千切り | 冷水に放ち、白髪ネギとする |
ピーナッツ油 | 大さじ2 | |
パクチー | 適量 |