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時速1kmの思考

魚屋のおばちゃん推し「ホウボウは天ぷらにせよ!」

ほうぼう

さっさと仮住まいから脱却したい思いとは裏腹に、新居探しは難航している。
土地勘のある宮古島とかグアムなんかに移住してみたいが、家人の仕事の状況からしてさすがにそこまでは踏み切れず、とにかく東京へのアクセスがよいところ、海が見えるところ、安くてうまい食材が手に入るところ、という条件は固まった。

まずは逗子方面に狙いをさだめ物色していたが、コロナの影響もあり移住が殺到しているそうで、物件価格が高騰しており手が届きそうにない。
次点にきたのがさらに南に足をのばした三浦半島である。三浦なら京急で実家の品川へも直通だ。


実際に足を運んだ三浦は、予想以上に気持ちの良い場所だった。
海あり山あり畑あり。
漁港にいけば新鮮な魚が並び、内陸にはいればキャベツ畑一色。直売所にはさっき土から上がってきましたわといわんばかりの瑞々しい野菜がわんさと積まれている。流行りの西洋野菜も都内と比べれば破格である。

内見を終えてからの食材調達がコロナ禍の密かな楽しみとなり、その日も魚屋を巡っていると、本日のオススメはホウボウだという。1尾680円。都内とそれほどかわらない値段だ。しかもカゴ一盛り3尾だから2000円以上になってしまう。
ただ物欲しそうなねっとりした視線を、魚屋のおばちゃんが見逃すはずがない。

「ねぇ、これ絶対おいしいからもっていきなよ」と猛攻撃が始まる。なんとか愛想笑いで応戦するも、次は従業員総出でおばちゃんを援護射撃。あまりに分が悪いのでいちど店を離れてみるが、頭からホウボウが離れず、結局また魚屋に戻ってきた。

「これ3尾1000円でいいよ」とおばちゃんに腕をつかまれる。
「ホントに?」
「ホントだって。だからもっていきな。天ぷらやんなよ。絶対に天ぷら!」と熱いエールを受ける。
「本当に1000円でいいの?」と念押しすると、
「うん、だから6尾もっていきなよ」
さすがおばちゃん、商売上手である。

さすがに6尾は食べきれないので、3尾を連れ帰ってきた。


三枚おろしにしたホウボウは小骨をとり、皮付きのまま、刷毛でうすく薄力粉をはたいて、ゆるめの天ぷら衣をまぶして高温でさっと揚げる。赤い皮がうっすら透けて美しい。

天つゆは出汁:薄口醤油:みりんを4:1:1で合わせてさっと炊いたらできあがり。

ほうぼうの天ぷら

いままでなぜ、ホウボウを天ぷらにしなかったんだろう! 魚屋のおばちゃんが推すだけのことはあり、これは衝撃的な旨さである。ぷりぷりの締まった身が、ふんわり軽い食感になり、いくらでも食べられてしまう。塩でもうまいが、やっぱり天つゆに軍配が上がる。ショウガ汁をすこし忍ばせてもいい。

ほうぼうの天ぷら

おもえば、丸のままの魚を買うと刺身にしがちである。これまでの記録を確認しても、ホウボウはほぼ刺身で食べていた。
なんでも刺身にしてありがたがってしまうのは、もしかしたら貧乏性なのか。3尾もあると心の余裕が生まれるのかもしれない。これからは色々な食べかたを試してみるべきだとおばちゃんに感謝しながら天ぷらを完食。

ほうぼうの天ぷら

翌日は刺身と、アラでとった出汁でみそ汁を。
刺身は一日おいたほうが断然うまいね。