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時速1kmの思考

水菜と油揚げの煮浸し

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「まーた煮浸し!?」と昔はよく毒づいたものだ。食卓にあがる菜っ葉と油揚げを見るたんびに、幼心にため息がもれた。いま思えば非常に失敬な話であるが、もっとハイカラなものが食べたい年頃ってものはある。
煮浸しという料理がなければ、いまの私は存在しなかったかもしれない。もしかしたら体の半分くらいは煮浸しで構成されているのかもしれない・・・というのは大げさだが、それほど煮浸しには世話になってきたのだ。

煮浸しは野菜が主役だけれど、いったい誰が油揚げという名脇役を連れてきたのか。
日本豆腐協会によれば、殿様が食べるような贅沢品だった豆腐が、庶民の口に入ったのは江戸中期頃だという。天明二年(1782年)に出版された『豆腐百珍』には、通品にカテゴライズされている油揚げ。つまりは、それまでの煮浸しは本当に野菜だけの、さぞ地味な、いや滋味なものだったのだろうと想像する。
だから初めて煮浸しに油揚げを加えてみた料理人は、一体どこのどなたかはわからないが、よほどの食いしん坊か、天才的な舌の持ち主に違いない。いや、もしくは相当の酒飲みか。

以前、客が来なくて厨房で暇をもてあましたときに、板長と実験してみた。出汁で炊いた野菜だけを一口食べ、そのあとに炊いた油揚げを食べ、さらにそれを一緒に食べる。野菜の旨みと香りが油揚げでぐっと引き立てられて、油というものの偉大さを思い知ることになる。砂糖の必要はないほど野菜が甘く感じる。昨今は敬遠されがちな油だけど、野菜の旨みを引き出す油はやはり必要なものなんだと確信した。

今回の煮浸しは水菜と油揚げ。
出汁:薄口醤油:みりんを16:1:0.5の割合で火にかけて、塩少々で味を調整。油揚げから甘味が出るのでみりん控え目にしてあるが、醤油と同割でもいい。油揚げは開いてから、水菜に合わせて細切りにして、強火で一気に炊きあげる。
箸でがっとすくって野菜を食べ、スープまで飲み干せる体に優しい味を目指した。

水菜と油揚げの煮浸し

材料

水菜 6株(1パック) 3cmに切る
油揚げ 1枚  
出汁 480cc つくりかたはこちら
薄口醤油 30cc
みりん 15cc
少々

つくりかた

  1. 水菜は冷水にしばらくつけておき、葉がぱりっとしたら、3cmほどに切る。
  2. 油揚げは通常油抜きするが、質のよいものなら旨みになるので不要。開いて一枚にして、水菜に合わせて細切りする。
  3. 出汁〜みりんを強火で一煮立ちさせる。水菜から水分が出るので、吸い物より多少濃い味に塩で調整する。
  4. 油揚げを加え、再び沸騰してきたら水菜を入れて菜箸でぐるりとかき混ぜて全体が馴染めば出来上がり。