ここ十年ほど毎年のように通っている宮古島。なんで飽きもせずまた宮古島? と周りはいぶかしがる。自分でも不思議なくらいだが、あのゆるりとした風、身体に突き刺さる太陽光線、無色透明の海、夜な夜な浴びる泡盛がすっかり体に馴染んでしまったんだろう。
そして行くたびに新しい発見があるのも魅力のひとつだ。
宮古島もここにきて、よくも悪くも都市化が進んでいるという。観光客が増え、浅瀬の珊瑚は壊れていき、中国からは大型フェリーがのりつけ、以前はふらりと入れた飲食店も予約なしではどうにもならない。
とはいえ、変わらないこともある。たとえば菊栄食堂のそばである。
メニューには「そば」としかかいていない。ほかはカレーやチャンプルー、ちゃんぽんが並んでいるから、わざわざ「宮古そば」と書く必要性もないんだろう。どの料理も500〜600円、毎日でも通っても財布に優しい港の食堂だ。
一見ネギしかのっていない素っ気ないそばなんだが、麺の下には豚肉が二枚、カマボコが一枚。この隠しスタイルこそ宮古そばのTHE王道、伝統的な姿なのだと地元の人は口をそろえる。
鰹出汁が効いたさっぱりスープに太めのストレート麺がよく絡む。ここのコーレーグースはかなりパンチがあるんだが、たっぷりとかけて汗を垂らしながら麺をすする。すすってもすすってもなかなか碗の底が見えない。控え目な見た目の割に、ボリュームはすごいのだ。これがまた、嬉しい変わらない事実である。
とい面に座る地元のお爺とタクシーの運転手はカレーを食べ、隣のテーブルでは定食を食べ終えた宮古女子がおしゃべりに花を咲かせている。なんとものんびりとした昼下がりだ。