カイワリアジは真鶴の寿司屋で食べて以来、推し魚のひとつだ。扁平だけど尾には背骨のようなぜいご有。つまりはやはり、これでも鯵の仲間なんだろう。
近代魚類分類学の父・田中茂穂の『魚の味』によれば、鯵はムロアジ類、マアジ類、シマアジ類に大別されるが、カイワリはシマアジに属し、「周年美味で、時期によってさほど優劣ない魚」と評されている。
魚の味 - 国立国会図書館デジタルコレクション
都内では見かけたことがなかったが、日本の太平洋側では割とメジャーな魚らしく、宮古島でも稀に釣れるという。島で料理屋を営む友人は、ゆうに60cmは越えるカイワリならば「ノリすぎず、ノッテいる、ほどよい脂」で高級魚にふさわしい味だと話してくれた。
今回手に入れたカイワリは手のひらサイズなので幼魚なのだろう。だが二人晩酌にはしっくりくるサイズだ。早速三枚におろす。
おろしかたは真アジと同じ。真アジに比べて内臓や血合いがすくないので、カマスとならぶ捌きやすさだった。
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鯵の風味は強くなく、生姜よりワサビがあう。歯ごたえはしっかりしており、たしかにシマアジ由来を感じさせる弾力が魅力だ。腹身は脂がのっているものの、ふわっと鼻にぬける上品な香りと甘味。うっかり日本酒に手をだしてしまった。
釣り好きな友人は「いまだシマアジを越えるカイワリは食べたことがない」というが、シマアジのように価格が高騰しても困るんだよな。こういう魚はひっそりと隠密食いするに限るんだよ。