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時速1kmの思考

八百屋に学ぶ白菜の漬け物のコツ

普段の食事のあれこれに物言いをつける家人だが、こと漬け物に関してはまことにうるさい。市販の漬け物にも手厳しく、「これは甘い」だとか「余計な味付けがしてある」だとか、難癖をつけるのが趣味なのだろうか。もしくは単なるマニアか。ではどんな漬け物が好きなのかと尋ねてみると、「昔、近所のおばさんが漬けてくれたやつはよかったなぁ」という。どこの誰? 知らんがな。
市販のもので唯一気に入ったのは、銀座若菜の漬け物だ。原材料表示を見てみると、たしかに塩と野菜のみのシンプルな構成だ。だが茶請けにむさぼり喰うにはもったいない分不相応の高級品である。


「美味しいといいけどなぁ~」と心配そうな面持ちで八百屋が分けてくれたのが、自家製の白菜の漬け物だった。たっぷりの漬け汁に白菜と輪切の唐辛子が浮いている。これが家人に海馬にクリーンヒットした。自らいそいそと白菜漬けを冷蔵庫から取り出し、ビールで口を湿らせるのが日課となった。
たしかに、塩味が強すぎることなく、酸味はやわらかで、漬け汁もさらりと爽やか。とにかく絶妙なのだ。そのまま食べてもうまし、白飯にのっけてもうまし。困惑状態で口に運ぶ自分がいた。これまで自分でも何度か漬けてきたが、これほど調和のとれたものはできなかった。
毎日欠かさず食べて、これで最後だという日。家人は漬け汁を祝杯よろしく飲み干した。八百屋も近所のおばさんも度肝を抜かすに違いない。

翌日、八百屋を尋問する。どうやったら白菜をあんなにうまく漬けられるのか。
「塩で漬けただけだよ~」となかなか口を割らない。
「昆布もいれてないですよね?」と仕掛けてみると、そうだと答える。人によっては昆布や柚子は蛇足でしかないのだ。これは手強い。なんとか食い下がらねば。
「漬け汁がとても美味しかったんですよ。二度漬けですよね? どうしてあんなにたっぷり汁気がでるのか不思議で・・・・・・」
「そうそう漬け汁がミソなんだよね」ややアタリの手応え。もう一押し。
「二度目に使う漬け汁をね、あらかじめつくっておくのよ。塩とね、ほんのちょっぴり味の素ね」

釣れた! まとめると、① 昆布、柚子は使わない ②本漬けの漬け汁はあらかじめ用意する ③ 味の素少々だ。
漬け汁の味付けは長年の勘なのでうまいこと説明できないというが、秘技を聞き出せたのは得がたい情報だ。
じゃあ自分もやってみようと、白菜を丸ごと1つ求める。一番よさそうなものを選んでくれ、ほくほくして持ち帰る。


さて、ここでひとつ問題が生じる。我が家には味の素がないのだ。味の素の使用についてはここ最近、SNSでも議論がヒートアップしている。ちなみに自分は味の素を否定していない、どっちでもいい派である。カップラーメンは好物だし、外食でも気にしたことはない。が、自分ではまったく使わない派でもある。
幼少期に塩と間違えて味の素を誤飲して吐いてしまったというほろ苦い記憶(コーヒーを飲もうとしてめんつゆだった感覚に近い)と、家飯でわざわざ使わなくてもいいか、という私的な理由だ。漬け汁を飲み干した自称神の舌をもつ家人(実際プロの料理人も驚く鋭い味覚をしている)いわく、使っているのはごくごく微量だろう。白菜を漬けるために味の素を買っても、おそらく他に使い手がわからず放置されることになりそうなので、他の手段を検討する。

たとえば藻塩なんかどうだろう。味の素はグルタミン酸由来のうま味調味料だ。グルタミン酸といえば昆布。だが今回は昆布を使いたくないので、海藻の成分が含まれた藻塩ならなにかしらの効果が得られるかもしれない。ちなみにこのたび求めた藻塩は1kg300円、味の素は1kg1260円だ。味の素って高級調味料だったんだな。
ということで、味の素コーナーに背を向け、対面の塩売場で藻塩に手を伸ばした。

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konpeito.hatenablog.jp