苦節7年、ようやく納得のいくトルティーヤが焼けるようになってきた。
ここでいうトルティーヤとは、スペインのオムレツでなく、メキシコで食べられている薄型パンのことである。どちらも「tortilla」と綴るのでややこしいんだが……。
とにかく、長いこと失敗を重ねてきた料理のひとつだったことは間違いない。
トルティーヤがうまくつくれるようになった要因を考えてみたところ、思い当たることが3つあった。
① 粉を変えた
② 鉄板を変えた
③ 焼きかたを変えた
まぁたいしたことじゃないんだが、そんな小さなことで上手くなるものなのだ。以上を踏まえて、トルティーヤをうまくつくるコツをまとめてみたいと思う。
① 粉の選びかた
トルティーヤには大きく分けて、小麦粉でつくられた「フラワートルティーヤ」と、トウモロコシ粉でつくられた「コーントルティーヤ」の2種類がある。小麦粉でつくられたものは、メキシコの影響を受けたアメリカではポピュラーだが、本場メキシコではトウモロコシ粉でつくられたトルティーヤが主流だ。
メキシコ料理店を経営する友人も、「やっぱりトルティーヤはコーンじゃなきゃね!」と胸を張る。トルティーヤはメキシコ人にとって誇り。なにより、香ばしさがまったく違うのだ。
とはいっても、十数年前だとトウモロコシ粉を手に入れること自体がむずかしかった。当時近くのスーパーマーケットで見つけたコーンフラワーで試みたものの、この粉ではコーンブレッドはつくれても、トルティーヤはつくれなかった。生地がまとまらず、ぼろぼろと崩れてろくに焼くことさえできなかったのだ。
なぜか?
それは、トルティーヤにはトルティーヤをつくるためのトウモロコシ粉があるからだ。その専用のトウモロコシ粉が、マサである。
マサ粉とは?
マサ粉は、トウモロコシを「ニシュタマリゼーション」という下処理をしたのちに挽かれた粉だ。具体的には、トウモロコシをアルカリ性の水溶液で煮て、外皮を取りやすく加工してあるのだ。これはアステカとかマヤなどの古代から受け継がれる食の知恵で、体内に栄養素が吸収されやすくなるうえに、トルティーヤの生地をつくる場合には適度な粘りもでやすくなる。
つまりは、マサ粉でないとトルティーヤはうまくつくれないのだ。
そしてようやく先日、グアムのスーパーマーケットで手に入れたのがこちらのマサ粉。何重にもビニールで包んでスーツケースに詰め込んだが、もれなくTSAの手によりスーツケースがこじ開けられてしまった。土産が粉モノばかりだったから、さぞ怪しかったんだろう。お持ち帰りの際は、機内持ち込みしたほうが無難だ。
細かいことになるが、手に入れたのはマサ粉のなかでも「マサ・ハリナ」というものだ。これはマサ粉を乾燥させて細かい粒状に加工されたもので、通常のマサ粉よりも扱いやすい利点があるものの、生のマサよりも香りが弱いのが欠点でもある。
つまり、マサ粉にもいろいろな種類があるので以下にまとめておこう。好みに合わせて、マサを選ぶところからトルティーヤづくりは始まるのだ。
② 鉄板の選びかた
鉄のフライパンのなかでも、よりぶ厚いものだと安定的に焼けることがわかった。
たとえば、すき焼き鍋のような鋳物鍋はかなりうまいこと焼ける。
今回はこちらのすき焼き鍋を使った。
konpeito.hatenablog.jp
③ 焼きかた
ヘラの使い方が最大のコツなんだが、写真の都合上、つくりかたで紹介しよう。
マサ・ハリナでつくるトルティーヤ
材料
マサ・ハリナ | 200cc | |
熱湯 | 200cc | |
塩 | 少々 |
ミニタコスが15枚できる。粉に対する水分量は、基本的には同量のカップだが、メーカーによる説明書に従ってほしい。
つくりかた
1. 粉、熱湯、塩を混ぜる
粉に塩を加えてよく混ぜ、熱湯を少しずつ入れて菜箸で混ぜる。
温度が下がったら、手でまとめて、しっとりするまで捏ね、ラップをして1時間休ませる。
3. トルティーヤプレスでつぶす
クッキングシートを二つ折りにして、その中央に生地をのせる。
軽く手の平で潰してから、ゆっくりと圧力をかける。
このトルティーヤプレスは、元職場のエンジニアがDIYしてくれたものだが、場所によっては圧力のかかりかたがまちまちである。なので、生地を90度ずつ回転しながら、4方向から圧力をかけると、均等に薄くなる。構造としてはこちらが近いだろう。
クッキングシートから生地をそっとはがしたら、焼く。
4. 焼く
中・強火で熱した鉄鍋に、生地をおく。油はひかなくてよい。基本的には表裏1分ずつが目安だが、裏は気持ち早く焼き上がる。
1分焼いたら、ヘラで生地全体を軽く押してやる。これが最大のコツ。
すかさず裏返すと、生地がぷっくりと膨れてくるはずだ。ヘラで潰しておかないと、このぷっくり現象は起きない。
全体がぷっくりと膨らまなかったら、ヘラで空気を押し出して、生地全体に行き渡らせてやる。
1分焼いて、もし写真のように少し焦げてしまうようなら、火力を下げる。
慣れてくると面白いようにどんどん焼ける。
焼いているうちに、次の生地をトルティーヤプレスで潰しておこう。
焼けたトルティーヤは保温しておかないと硬くなってしまう。写真はラップを使っているが、布巾で包んでおくほうがオススメだ。ラップの場合、水分の具合によってはべっちゃりとしてしまう。
やっぱりトルティーヤウォーマーがあったら便利だろうなぁ、とは思う。
巻く具材はお好みで。
具をのっけて、
ほおばるアミーゴ!