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時速1kmの思考

【暮らしの道具】神は細部に宿る。一菱金属のすくいやすく返しやすいターナー

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ターナーとフライ返しは、似て非なる調理器具

魚をうまくひっくり返せない苛立ち。目玉焼の黄身が潰れたときの喪失感。餃子の皮が剥がれたときの絶望感。ほとんどが、あと少しで完成する! という場面で起こる悲劇の数々。そろそろ我慢も限界だ。

初めてひとり暮らしをしたとき、フランフランでフライ返しを購入したのが十数年前。当時は調理器具にこだわることもなく、安く手に入ったことにただ満足していたし、ステンレス製の丈夫な物で、今でも十分に使える。

時が経つにつれて生活環境も変わり、フライパンや鍋などはその都度買いそろえていったが、フライ返しにはほとんど無関心だった。ところがある日突然、不満が爆発したのだ。このフライ返しは使いづらい!

物を混ぜるという意味では十分なんだが、物をひっくり返すという機能が圧倒的に足りていない。フライ返しとターナーは、よく同じカテゴリーで販売されているが、まったく違う機能を持ち合わせた別の調理器具なのかもしれない。

元凶は、フライパンのサイズとターナーの頭の部分の大きさが合っていないことだと気がついたのが、去年の頭ごろだ。よく使う鉄のフライパンは直径20cmと18cmだ。その隙間に無理矢理大きなフライ返しをねじり込むと、調理中の食材に過度のストレスを与えてしまうのだ。

それからターナーを探す日々が始まったんだが、なかなかこれという物が見つからない。というか、そもそもなにが正解のターナーなのかがわからなかったのだ。「ひっくり返す」という機能のみを重視するなら、貝印 SELECT 100 ターナー DH-3012のような柄の短い物もプロっぽくていい。しかし、これだと混ぜるという機能を捨てることになる。ひとつの機能しかない調理器具を買うことに踏み切れず、ずるずると日々が過ぎていった。

そんな紆余曲折の末、銀座・松屋で催された「手仕事直売所」で偶然に出会ったのが、一菱金属のターナーである。
これまで散々悩んできたにもかかわらず、まさかのターナー衝動買い。握ったとたん、使っている自分が想像できたからだ。店員によれば、このターナーの売りは「返す」「炒める」「押しつける」「押しきる」といった複数の調理動作が可能になることだったが、なによりの決め手は、ちょうどいい塩梅の大きさだったことだ。

神は細部に宿る、こだわりのエッジ加工

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なにより驚いたのが、このターナーの頭部分に施してあるエッジの加工だ。中華ヘラも一方向のみこの加工が施してある。だが、こちらは持ち手以外の三方向すべてにだ。ただでさえ薄く精度の高い日本製のターナーに、日本刀よろしく片刃にしてあるようなものだ。つまり、三方向のどこからでも食材に差し込み、ひっくり返したり、押しきったりできるわけだ。よくこんなこと考えたものだ。開発者の顔を拝みたい気分である。

そして直感どおり、頭の部分が小さいので、小さいフライパンでもぐっと中に差し込むことができたことに思わず感嘆。餃子もお好み焼きも気持ちよいくらいスパッとひっくり返せる。

継ぎ目やネジ止めもないシームレス加工なので、非常に洗いやすく衛生的。柄も短かめにつくられているので、細かい作業もできる。
たかがターナー、されどターナー。「神は細部に宿る」とはこのことか…と思い知ったわけである。

唯一気になった点といえば、「混ぜる」という機能についてはやや劣る点だ。つまり、大きな中華鍋で炒め物をつくる場合は、それなりの大きさのフライ返しのほうが扱いやすい。

この一菱金属のターナーが万人に受けるわけではないだろう。
もっているフライパンの大きさや材質によって、選ぶターナーとフライ返しは千差万別だということだ。