平昌五輪で一気にメジャースポーツの仲間入りをしたカーリングの影響で、イチゴがちょっとした騒動を起こしている。日本のイチゴ品種が韓国に流出していて、それがゆゆしきことだというのだ。
しかし、だ。ペルーのアンデスが発祥の地とされるジャガイモは、侵略という手段で16世紀にスペイン人によって新大陸からヨーロッパへ、そして瞬く間に世界へと広がっていった。寒冷地でも育つジャガイモは飢饉や戦争のあいだも人々の腹を満たしてきたわけだが、いまジャガイモを育てるのにペルーにロイヤリティなど支払っているのだろうか? いや、これまでにも支払ったことがあるのだろうか?
イチゴ農家の知的財産をないがしろにしろといっているわけではもちろんない。
近代の日本のイチゴはオランダによってもたらされた品種だという。日本はイチゴが育つ環境としては多湿であるから、農家がさまざまな研究・開発を施しておいしいイチゴが生まれたわけだし、私たちはその恩恵にあずかっている。
もし本気で、品種の流出を防ぎたいなら、もはや完全警備の建物の中でつくるしかないだろう。そうなれば、イチゴ畑のある風景は日本から消えてしまうわけだ。それもそれで、なんだか風情のない、寂しい光景だなと思う。
すでに海を渡ってしまったイチゴを今更取り上げるのは難しいだろう。誰だって一度手にしたものを手放すことはしたがらない。誰もが美味しいイチゴやジャガイモを、適正な価格で食べたい。
そういう事実はあると認めたうえで、ある程度余裕を持って対処することはできないものだろうか。
青果店に、韓国のイチゴ、オランダのイチゴ、日本のイチゴが並んでいてもいいのではないか。どれを選ぶのかは消費者の自由である。
さて、そんなことを考えているうちにイチゴの季節がやってきた。これを書き始めたのは一カ月ほど前なんだけど、答えがみつからなかったのだ。
国産の品質はすばらしいものだけど、やはり価格はそれなりでなかなか手が出ないのが正直なところ。なので値引きしてある腐りかけのイチゴを見つけると嬉しくなってしまう。
腐りかけといってもちょっと削ってやれば見てくれは悪いが甘さは上々。腐りかけだからこそ、その日に食べられるものは惜しみなく食べ、残りは冷凍して大人のジェラートにする。がつんと肉を食べたあとによく合うデザートだ。友人の子供にも好評。もちろん、酒は抜いてくれ。
大人の苺ジェラート
つくりかた
- イチゴのヘタをとり、よく洗う。腐りきった部分は取り除いておく。形は気にしなくていい。
- 水気をよく拭き取ったら保存袋に入れて冷凍する。
- ミキサーに冷凍イチゴとジン、牛乳を少しずつ加えて撹拌する。入れすぎるとジュースになってしまうので、様子をみながらミキサーを回す。