八月最後の週末は、友人宅に招かれ持ち寄りエンド・オブ・サマー・パーティ。家主はカオマンガイをつくってくれるというので、エスニックに寄せて麻婆豆腐をもっていくことにした。
これまで牛、豚、猪などさまざまな肉で麻婆豆腐をつくってきたが、いまここで腹の底から叫びたいのは、
麻婆豆腐は羊がいちばんウマい!
ということだ。なにより羊が苦手な人たちが絶賛してくれたのは想定外だった。羊の独特の香りもスパイスと融合するとまったく気にならないらしい。それどころか、むしろクセのない牛や豚では物足りなくなってくるほどなのだ。噛みしめたときのシャクっとした肉の食感も申し分ない。
興奮さめやらぬまま、なぜこんなに羊が合うのか考えてみた。羊肉は脂肪分が比較的少ないうえ、融点が高いので体内で吸収されにくいので、健康志向の現代では人気の高い肉である。
ところが麻婆豆腐という料理は容赦なく油を使う。およそヘルシーとは言いがたいが、実際それがうまい麻婆豆腐のコツだ。だが牛や豚などその肉がもつ脂が強い場合、かなり胃にもたれるヘヴィーなものになってしまう。だから本能的に油を控えて麻婆豆腐をつくるようになる。ところが羊肉だと、しっかり油をつかっても割合さっぱりとしているのだ。
『辻調が教えるおいしさの公式 中国料理』によれば麻婆豆腐は、
麻(マー:花椒の辛さ)、辣(ラー:唐辛子の辛さ)、燙(タン:やけどするくらい熱い)、嫩(ネン:豆腐はやわらかく)、酥(スウ:肉はサクッとした歯ざわり)、鮮(シェン:うまみがあり)、香(シャン:香りよく)が特徴です。
羊にくは酥・鮮・香(スウ、シェン、シャン)を兼ね備えている。まさに麻婆豆腐に最適な肉なんじゃないか。
そしてうまい麻婆豆腐をつくるもう一つのコツはメリハリのある調理だ。強火と弱火をしっかり使い分けてこそ最強の麻婆豆腐が出来る。そこで今回はつくりかたに火加減を明記することにした。調理中の写真は前回の猪肉の麻婆豆腐となんら変わりがなかったので割愛する。
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羊肉麻婆豆腐
材料
羊肉 | 100g | 肉の食感が残るように粗みじん |
豆腐 | 1丁(300g) | 賽の目に切る |
長ネギ | 山盛り大さじ3 | みじん切り |
ニラ | 3本 | 葉ニンニクの代用 |
赤花椒 | 小さじ大盛り1 | ホール |
合わせ調味料A | ●はあらかじめ混ぜておく | |
●豆板醤 | 小さじ2〜3 | |
●甜麺醤 | 大さじ1 | |
●豆鼓 | 小さじ2 | みじん切り |
●ニンニク | 小さじ1 | すりおろし |
●唐辛子(粉) | 小さじ1 | |
●ラー油 | 小さじ1 | 自家製の麻辣油を使用 |
醤油 | 大さじ1弱 | |
煮込み調味料B | ||
鶏ガラスープまたは熱湯 | 150cc+α | |
紹興酒 | 大さじ1 | |
胡椒 | 少々 | |
水溶き片栗粉 | 大さじ2 | ソースディスペンサーにつくりおき |
ピーナッツ油 | 小さじ2 | |
ラー油・山椒油 | 適量 | |
青花椒 | たっぷり | パウダー |
つくりかた
① 豆腐を温める(弱火)
1リットルくらいの湯に塩を大さじ1ほど入れ豆腐を温める。豆腐の水分が抜けて崩れにくくなる。
② 羊肉を炒める(強火)
大さじ2ほどの油を鍋に入れ、花椒(ホール)を弱火で炒める。香りがでたら花椒だけ取りだし、強火で肉を炒めていく。羊からでた脂が透き通り、肉に焦げ目がついてパチパチとはじけてきたら調味料を加える。
③ 肉味噌をつくる(弱火)
弱火に落として肉を奥に寄せ鍋を傾けると、油だけ手前に寄ってくる。その油で調味料Aを炒める。焦がさないように香りが出るまでしっかり炒めたら、醤油を加えて肉と合わせる。
④ 調味料Bをいれる(強火)
熱々の鶏ガラスープを入れると煙とともにスパイスが立ちこめるが、ひるまずに調味料Bを加え、煮立たせる。
④ 豆腐を入れて煮込む(弱火)
湯切りした豆腐を入れる。ときどきお玉の背で押しながら弱火で3分ほど煮込み、豆腐に味を含ませる。豆腐が隠れるギリギリの水分がいい。味見をして足りなければ調整する。
⑤ とろみをつける(弱火)
スープの味が決まったらネギとニラを加えてひと混ぜ。水溶き片栗粉を少しずつ入れたら大きくかき混ぜ、強火にする。
⑥ 焼き付ける(強火)
ピーナッツ油を鍋肌から入れ、鍋を揺すりながらぐつぐつと焼き付ける。好みでラー油と花椒粉をかけて仕上げる。
使ってよかった暮らしの道具
長谷川園のみそ汁鍋
麻婆豆腐は土鍋に入れて、風呂敷で包んでもっていった。友人宅でコンロを借りて温めそのまま出せば、食器も汚さなくてすむし、パーティの雰囲気も損なわない。