目的もなくスーパーをふらつくとこういうことになる。
ソテー用のラム肉が半値まで落ちているのだ。
厚みは2cmほどか。しかも残り2パック。ややドリップがでてるものの黒ずんだところもなく、悪くない。いや、上等上等。
そうして不用意に買ってしまったラム肉はカレーで手を打とうと算段していたんだが、困ったことに腹の具合がよろしくない。
ここのところ胃腸が油に過剰反応を示すのだ。おまけにカレーによる米の過剰摂取も気にかかる年頃。ここはヘルシー優先で串焼きに進路変更だ。
まずは羊肉の状態をチェック。ドリップを拭き取り、筋ばったところを中心にフォークで刺しほぐし、一口大に切る。
次にニンニクひとかけら、その半分ほどのショウガをすりおろす。
肝心なのはスパイスだ。
オレガノ、コリアンダー、クミン、ターメリック、パプリカ、ナツメグ、カイエンペッパー、清水スパイスのガラムマサラ(シナモン、ローレル、クミン、コリアンダー、カルダモン、黒胡椒、クローブ、メース)を小さじ1/4ずつ配合。
これに肉の重量の1%ほどの塩を加え、隠し味としてレモンコンフィの漬け汁を大さじ2杯。
すべてを合わせて、オリーブオイルをたらし羊に手でよく塗り込み、3時間くらい放置する。
野菜はズッキーニとミニトマトで決まりだ。これをマリネードした羊肉と交互に鉄串に刺していく。
満を持しておなじみ「KAN焼き上手」の登場だ。強火でカンカンに熱してから串を並べて、中〜弱火でじっくりと火を入れる。
ひっくり返したり、場所を移動させたりしながら、固唾を飲んで肉を見守る。もうね、ビジュアルだけでも君たち合格。
それにしたって串焼きは人の腹に訴えかけてくるものがある。ウン百万年も前から変わらない原始的かつシンプルな調理法がいまこの狭い台所でも繰り広げられていること自体、よく考えたら大変なことである。
したたる肉汁に応えるように立ち上る煙に目をしばたかせ、胃にじわりと広がる空腹に堪えかねたころ、腹の奥に眠っていたホモサピエンスがむくりと目を覚ます。
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部屋じゅうに異国の匂いが充満し、トマトがはじけて、ズッキーニの皮と羊に焦げ目がついたら食べ頃だ。彩りに刻んだパクチーも散らしておこう。
今日はジャスミンライスにダルスープ、ギリシャ風の焼きナスの和物をそえてワンプレートにした。
トマトと羊の相性は神がかり的だ。米とスープに合わせてもぐもぐ口内調理をして、酸味の効いたナスで口の中をリセットし、また肉にかぶりつきすかさずワインを挟み込む。そうしているうちに心身共に穏やかになっていく。
結果、米泥棒的なおかずとなり、〆は太田胃酸となった。