料理に関する書籍を貪るように読みふけった時期があった。仕事をやめて暇だったのか、それとも突然料理に目覚めたのかは、よもやさだかじゃない。
とにかく気になった料理書を片っ端から買っていたわけだが、なかでも気に入っている一冊が『壇流クッキング』だ。
この本はレシピ本でない。いや、むしろレシピはかなり適当目分量。だいたいこんな感じだよ! とりあえずつくってみてくれたまえ、諸君! といいながら次々に壇一雄の得意料理が独断的に披露されていく。もちろん氏には確固たる味覚と嗅覚が備わっていたからこそ、そんな力技も"あり"なのかもしれないが・・・・・・とにかく料理の勘を養うにはぴったりの一冊なのだ。あるときは一喝され、あるときはゆるーくやれよと励まされる、画期的な料理エッセイだ。
まず最初につくってみたのが、「スペイン酢ダコ」だった。初めてバックパックで旅したのがスペインだったから親近感がわいた。
壇一雄氏の言う「スペイン酢ダコ」というのは、サルピコン(salpicón)のことだと推察する。サルピコンは魚介と野菜を細かく刻んであえたマリネサラダのこと。「タコのサルピコン」を「これは酢ダコだ!」と飲み屋で豪語する日本男児がスペインを旅している姿はなかなかに面白い。
10連休が終わり、タコが20%引き、トマトも安い、ついでに抜けるような青空! となると、「スペイン酢ダコ」をつくるしかないのである。
サルピコン改め、壇一雄のスペイン酢ダコ
壇一雄氏のレシピに沿っていない箇所は、※印で明記してある。
材料
真ダコの足 | 2〜3本 | ※1 小さい賽の目 |
タマネギ | 半個 | 乱切り |
トマト | 中2個 | ※2 乱切り |
レモン | 1/4個 | ※3 |
塩・胡椒 | ||
酢 | 小さじ2〜 | ※4 |
落花生油 | 酢の2倍 | ※5 |
オリーブオイル | 少々 | |
コリアンダー | たっぷり | 乱切り |
ゆで玉子の黄身 | ※6 | |
青唐辛子 | 2本 | ※7 |
※1 氏は生の真ダコの足を2〜3本、さっと塩茹でにしているが、今回は茹で済みのものを使用。
※2 氏はトマトの皮をむき、種もとる。たしかに種をいれると水っぽくはなるが、昨今の日本産ミディトマトは甘く、種のまわりもうまい。なので皮はむかず、また乱切りにしたときにこぼれた種以外はいれてしまっている。
※3 特にレモンの分量は明記されておらず、小さく切ったレモンを使うとあるが、今回は果汁をしぼり、皮を削って使う。
※4 酢の種類は明記されていなかったが、スペインならシェリービネガーか、白ワインビネガーだろう。今回は後者を使う。酢の分量は、小さじ2〜大さじ1くらいで試してほしい。
※5 落花生油の代わりに太白胡麻油を使用。
※6 氏が食べたサン・セバスチャンの酢ダコはゆで玉子の黄身を細かくしたものがトッピングされていたが、黄身をいれると汁が濁るのと、まったりした食感が好みじゃないので省く。ここだけは壇氏と気が合わない。好きな人はいれてほしい。
※7 氏のレシピに青唐辛子は入っていないが、ぜひいれてみてほしい。鮮烈なうまさがある。