大学を卒業して十数年。いまだに学食の揚げ出し豆腐が忘れられないのは、あのころがまだ眩い人生だったからなのか。
雪のように白い衣はカリカリなのに、噛むともっちりした食感。そこからつるりとした絹ごし豆腐が表れたかと思いきや、口のなかでふわりととけていく。揚げただけの豆腐がstep-by-stepで食感が変わる……学食のおばちゃんをリスペクトしながら毎日のように食べていたものだ。
以来、数多の揚げ出し豆腐を食べてきたけれど、学食のそれを超えるものには出会うことはなかった。
そうなると、自分でなんとかつくるようになるわけだ。試行錯誤した結果、あの「かりもち」食感を生むのは片栗粉だということがわかった。
以前働いていた店でも、揚げ出し豆腐は定番だった。師匠から「豆腐の衣は片栗粉と薄力粉を混ぜて使うと剥がれにくいんだよ」と教えてもらった。たしかに衣がはがれず、とてもつくりやすく仕上がりも美しい。でもやはり、私の目指す食感とは違う。モチモチ食感が足りない。
なので結局、自分流の揚げ出し豆腐に戻ってしまった。
片栗粉一本でつくる揚げ出し豆腐のつくりかたはとてもシンプルな工程だが、少々コツがあるのでまとめておく。
かりもち揚げ出し豆腐のコツ
豆腐の水は切りすぎない
豆腐に重石をして水をきってしまうと、せっかくの絹ごしのやわらかい食感が失われてしまうので、一口大に切ったらキッチンペーパーにのせて、豆腐自身の重みで水分が切れるくらいがちょうどいい。時間にして5分くらいで十分。
豆腐には薄化粧
水分の多い食材を揚げるときは、油はねに十分注意しなければならない。だから豆腐全体を片栗粉でしっかり包み込まなければいけないが、つけすぎると衣がはがれる原因となるのも事実。刷毛でつけるの丁寧な仕事がベストだが、手でしっかり片栗粉でコーティングしたあと、余分な片栗粉をぱたぱたとはたいてやればうまくいく。
衣をつけたら即、揚げる
片栗粉だけの衣は、時間が経つと豆腐の水分と片栗粉が固まって乾いてしまい、揚げるまえに衣がぼろりと崩れてしまう。薄力粉を混ぜる理由はこのためだ。
なので衣をつける前に、揚げ油をしっかり温めておくことを忘れずに。
油の温度
中温(160〜170℃)でじっくり揚げることで、白っぽく仕上げる。豆腐の角を指で触ったとき、がっちり固ければ揚げ上がりの目安だ。
かりもち揚げ出し豆腐
タレは出汁:濃口醤油:みりんを5:1:1の割合を基本にして、好みで4:1:1や6:1:1あたりで調整してもらいたい。濃口か薄口かも好み次第。
5:1:1でもやや濃いが、大根おろしをトッピングするといい塩梅になる。重要なのは、最終的にどう食べたいか、食べさせたいか、ということだ。これは師匠の受け売り。
上記の写真は、7:1:1の薄口醤油で配合。見た目は上品だったが、やはり油に負けてしまい、パッとしない味になってしまった。
揚げ鍋はいつものこちらを使用。
konpeito.hatenablog.jp
材料
絹ごし豆腐 | 1丁 | |
片栗粉 | 適量 | |
タレ | ||
出汁 | 180cc | 出汁のとりかたはこちらへ。 |
濃口醤油 | 30cc | |
みりん | 30cc | |
薬味 | 適量 | 大根おろし、ネギ、ショウガ、胡麻などお好みで |
つくりかた
- タレの材料を一煮立ちさせておく。薬味もあらかじめ用意。
- 揚げ油を中温(160〜170℃)に熱しているあいだに、豆腐を切って、キッチンペーパーにのせる。
- 豆腐に片栗粉をまぶして揚げる。
- 揚がった豆腐を鉢にのせ、タレを流し込んだら、薬味をそえる。