「ひさびさに見つけたよ〜、ひろこん!」
ちょっと興奮気味の板長は嬉しそうだ。
ひろこんとは、広こん。つまり広島特産の刺身こんにゃくのことだった。その昔は、ふぐの調理師免許を取るときに、この広島こんにゃくで鍛錬を積んだという。たしかに、見習いが毎度高級なふぐで練習するわけにもいくまい。
むし暑くなってきたので刺身こんにゃく(フジトシ食品)を店のメニューにのせることになり、いい練習になるからと、私の分まで築地で仕入れてくれたのだ。
さっそく平づくりで引いていく。
実際にこんにゃくを切ってみると、研ぎすまされた店の刺身包丁でさえ負けてしまうほどの弾力だ。
包丁の峰にしっかりと人差し指をおいてコントロールしないと切り口が歪になる。そして刃渡り全体を使わないと最後まで切りきることさえできない。
刃元から切っ先まで、刃渡り全体を使うというのは刺身を引くうえで重要な技術だが、その基礎がしっかりとできないとこのこんにゃくには文字通り、歯がたたないのだ。つまり、このこんにゃくが難なく切れるようになれば、魚の刺身を引くのは朝飯前になるってことだ。
ということで、最近は暇さえあればこんにゃくを切っているわけだ。梅雨があけるころには、上達しているといいなぁ。まずは定番の酢味噌で食べる。
やはり包丁を常に研ぎすましておくことは大事だ。台所に立つ気分まで変わってくる不思議。これまでは中砥しか使っていなかったけど、築地で粗砥を衝動買い。荒砥を買っておけば、中砥の「面直し」もできるので便利。道具は増えていくばかりである。
酢味噌に飽きたら煮てしまおう。薄口、みりん、出汁を1:1:6で合わせて煮て、そのまま冷やす。きんきんに冷えたのが夏のつまみにぴったり。
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