一昨日から腰痛がぶり返した。一歩足を踏み出すと腰から砕け落ちそうななか、這うようにして買い出しにでる。湯河原のスーパーをまわり、最後の力を振り絞って伊豆山の魚屋・魚久へ到着。ウツボ1つ50円!あの海のギャングが50円!一瞬腰の痛みさえ忘れてしまう。
「いまどき50円じゃなんも買えないわなぁ。あっ、うまい棒買えるか!」と店主は子どものようにケタケタ笑う。駄菓子と捉えればウツボは立派なもんだ。
構造的にはアナゴ系だと思うんだが、既に頭を落としてぶつ切りにしてあるので目打ちは出来ない。ひとまず粗塩でこすり洗いをして、よくすすいでから三枚おろしに挑むが、ぬるぬるした粘液に阻まれ包丁がまったく入らない。そういえばウツボが名物といわれる地域ではウツボ専用の洗濯機で丸洗いするとテレビで見たことがあり、そこまでして喰うかと驚いたものだ。手でちょっと洗ったくらいでは歯が立たないってことだろうか。
腰の踏ん張りがきかないから包丁にうまく力が伝わらない。直感的に「こりゃ怪我するな」と観念し、ブツをブツに切って揚げてしまった。塩、醤油、酒、生姜で下味をつけ、片栗粉と薄力粉混ぜて揚げる。
奇跡的に味付けバッチリハマった。なるほど、ウツボには背のあたりにエンガワのような細かい、でもしっかりした骨が縦に入っていて、かなり食べづらい。だがからりと揚がった皮のあたりはもっちりしてて、とても旨い。コラーゲンもさぞたっぷりであろう。骨のない腹側の白身なんて、フグのような味わいである。
うまく捌けたらいい食材なんだが・・・・・・こればかりは自分の未熟さを呪うしかない。といっても次回いつウツボに会えるかもわからないレア食材なので、なかなか難しいかもしれない。
後日、『漁師の知恵袋 魚の捌き方と食い方』をめくると、ウツボのとりかた、捌き方、食い方を紹介していた。次回のために、ここに記しておこう。
【ウツボの捌き方】
ウナギの捌き方と同じである。まな板に横に載せて、目に千枚通しを打って固定し、背から開く。ただし、ウナギみたいにスンナリとはいかない。ウツボの皮は憎ったらしいほど厚くて丈夫だからだ。戦時中の物資がなかった時代には、ゾウリの上張りにウツボの皮をなめして使っていたほどなのだ。そうやって作ったウツボのゾウリは猫がくわえて持っていってしまう、という笑い話までオマケに付いている。
だから、まず、背の皮に包丁で切れ目を入れておいてから、身に包丁を入れて、ゆっくり広げながら開いていく。開いたら、ワタを取り除いて中骨を削ぎ取る。皮はそのまま。
余談になるが、魚久では手作り惣菜が日々店頭を賑やかしているが、あると必ず買ってしまうのが海老マカロニサラダだ。海老はこれいじょうないほどプリプリで、こってりしたマヨネーズが海老と固めにゆがいたスパイラルのマカロニに絡まって、なんだか家では出せない絶妙の味かげんだ。