「食品サンプルみたいだね。あっ、誉め言葉だよ」
「いただきます」の前のひと言をどう受け止めたらいいのかは不明だったが、昼こしらえた冷やしたぬき蕎麦はうまかった。
うどんならきつね派なんだが、蕎麦だとたぬき派なのは、完全にマルちゃんの戦略に踊らされているとしかいいようがない。
ここでいうたぬき蕎麦とは、蕎麦に天かすをのせた食い物である。
関西では油揚げをのせた"蕎麦"を「たぬき」とよび、京都にいたっては刻んだ油揚げに餡をかけた"うどん"を「たぬき」というらしく、ややこしいとしか言いようがなく、天下統一も目処は立たなそうだ。
トッピングは、うまく剥けなかったゆで卵、モロヘイヤのおひたし、納豆、天かす。
モロヘイヤは出汁に浸けておくとなにかと便利だ。
暑い国エジプト原産、しかも王様の病気を治した都市伝説から「王様の野菜」と呼ばれ、クレオパトラもがち食いしていたほどだから、美的にもヘルス的にもお墨付きだ。
モロヘイヤのおひたし
- 熱湯でゆがいたモロヘイヤの葉を水に放ち、ザルで自然に水気を切る。絞る必要なし。
- 包丁で刻む。
- 冷やした出汁、薄口で味を調える。煮きったみりんや酒があればなおのこと良しだ。
モロヘイヤや刻むとネバネバの粘液がでてくる。日本人はこういうネバネバが身体に効くことをDNAレベルで知っている。これを毎食おちょこに一杯ずつ、ちびちびやっていけば、残暑の備えにもなるだろう。
出汁:薄口+濃口:みりんを8:1:1の割合に砂糖を少々をキンキンに冷やして、かけ汁とする。
konpeito.hatenablog.jp
その日の夕方、野良猫が庭に現れた。黒い前髪のある白猫だ。まだ幼い。目が合うと、床下に吸い込まれていった。慌てて見に行くが、急ごしらえで立てかけておいた板はまんまと破られていた。
直後、稲妻が空を切り裂いて、眼前の海原に落ちた。
間髪入れずに大粒の雨だ。雨樋から溢れた水が窓をたたき壊しそうなほど豪快な降りっぷりだ。
野良猫、野良ハクビシン、野良アナグマ・・・・・・好きなだけ雨宿りすればいいさ。梅雨明けが待ち遠しい。